2019.1.7
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贈与

民法改正で夫婦間の居住用不動産贈与の制度が変わる

(写真=goodluz/Shutterstock.com)
(写真=goodluz/Shutterstock.com)
2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、同年7月13日に公布されました。民法のうち相続法に関する改正が行われたのですが、これは1980年以来の大きな見直しとなり、原則公布日から1年に施行されることになっています。(一部法律を除く)

今回の改正・見直しの目的の一つとして、「残された配偶者の生活に配慮するなどの観点から、配偶者の居住の権利を保護するため」ということが挙げられます。居住用不動産贈与の制度改正についてもこの目的にあてはまりますが、今回は「どのように制度が変わったのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」について解説していきます。

これまでの夫婦間の居住用不動産の贈与

これまでも、夫婦間で居住用不動産を贈与した場合には税法上の恩恵を受けることができました。婚姻期間が20年以上の夫婦間で自宅の不動産を贈与することが可能です。新たに自宅を購入するための資金については、贈与税の基礎控除額110万円に加えて2,000万円の合計で2,110万円までは贈与税がかかりません。贈与があった年の翌年3月15日までに、贈与を受けた人がその自宅に住み、引き続き住み続ける見込みであることが適用要件となっています。

この制度を利用して夫から妻へ自宅を贈与した場合、夫が先に亡くなった後の妻の生活基盤は確保できるように感じるかもしれません。ただし、夫に相続が発生した場合、現行の制度で自宅の不動産贈与は「特別受益」として相続財産に持ち戻しが必要です。そのため、他の財産と合わせて相続財産の総額を計算し、それぞれの相続人の相続分が決まります。

その結果、生前に贈与した財産については遺産の先渡しをしたに過ぎなくなり、妻が取得できる財産は生前の贈与がなかった場合と結果的に同じになってしまうのです。これでは、「自分の死後に妻の生活基盤を確保する」という夫の意思が遺産分割の内容に反映されないことになってしまいます。この「持ち戻し」は、夫が遺言などによって免除の意思を明文化しておけば相続財産に含まれません。

妻は自宅の他に相続分を相続することができますが、多くの場合この意思表示が残されておらず、相続後に相続人間でのトラブルのもととなっていました。
 

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新しい制度の概要

そこで、今回の改正では婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産の贈与については、相続財産への「持ち戻し免除の意思表示」があったと推定することとしました。これによって相続後に、自宅の贈与について相続財産に持ち戻す必要がなくなりました。自宅は妻の財産として生前に贈与して生活基盤の確保をし、現金などの他の財産については他の相続人と遺産分割の話し合いのうえで相続することができるようになります。持ち戻しをした場合と比べて、妻が受け取れる法定相続分が多くなり、最終的に受け取れる財産の額も多くなります。

遺産分割の方法にも影響が?

なお、見直しをされるのは居住用不動産(土地・建物)の贈与についてのみで、自宅を購入するための資金贈与については今回の「持ち戻し免除の意思表示」の対象外です。また、この意思表示はあくまでも「推定される」に留まっていますので、今回の見直しで持ち戻しの対象外になるとはいえ、遺言などで贈与する側の意思表示を形に残しておいたほうが、相続発生後のトラブルも回避できると考えます。

配偶者の取得する財産が増えるということは、反面、他の相続人が取得できる財産が減ってしまうことです。権利意識の高まりから「受け取る権利があるものは主張しよう」と考える人も増え、その分、遺産分割を巡るトラブルは増加する可能性があります。そのため、自宅を含めてどのように財産を分割するのかを、財産を遺す側は生前に考えておくことが必要です。なお、この改正は原則として、公布日である2018年7月13日から1年以内に施行されることとなっています。
 

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