2020.3.30
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贈与

農地を贈与した場合に贈与税が猶予される?

(画像=Jakub Krechowicz/Shutterstock.com)
(画像=Jakub Krechowicz/Shutterstock.com)
さまざまな相続対策のうち、生前に財産を推定相続人に贈与する方法も活用されています。贈与には暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方法がありますが、不動産については評価額が大きくなり相続税と比較して税率が高いため、税負担も大きくなる傾向にあります。

ただし農地については贈与税の納税が猶予される場合もあります。今回は農地を贈与した場合の特例についてお伝えします。

農地の贈与に対する特例がある

農地については、以前は相続人のうち長男が全てを引き継ぐ「家督相続」の考え方が主流でしたが、戦後の民法改正以降は相続人の間で財産を公平に分配する「均分相続」の考え方になり、また相続人が農業を引き継がないというケースも増えてきたことにより、農地が細分化されてきました。

このような細分化防止や農業後継者の育成を目的として1964年に「農地等に対する贈与税の納期限の延長の特例」が創設され、その後1975年に「納期限の延長の特例」が「納税猶予の特例」に改正され現在に至っています。

特例の概要や適用要件

この特例では、農業を営んでいる人(贈与者)が農地等(農地・採草放牧地及び準農地)の一定部分を農業後継者である推定相続人(受贈者)1人に一括で贈与した場合、その農地等にかかる贈与税については受贈者が農業を営んでいる限り納税を猶予されます。

なお贈与者と受贈者はそれぞれ次に挙げる要件を満たす必要があります。

・贈与者の要件

1.贈与の日まで3年以上引き続いて農業を営んでいる個人
2.贈与をした日の属する年の前年以前において、推定相続人に対し相続時精算課税を適用する農地等の贈与をしていない
※過去に贈与者の推定相続人に農地を贈与し、その推定相続人が相続時精算課税の適用を受けている場合には、その贈与者の全ての推定相続人がこの特例を受けられないことになります。
3.対象年に今回の贈与以外に農地等の贈与をしていない
4.過去に農地等の贈与税の納税猶予の特例に係る一括贈与をしていない

・受贈者の要件

 贈与者の推定相続人のうちの1人で、次の要件の全てに該当すると農業委員会が証明した個人
1.贈与を受けた日において、年齢が18歳以上であること
2.贈与を受けた日まで引き続き3年以上農業に従事していたこと
3.贈与を受けた後、速やかにその農地及び採草放牧地によって農業経営を行うこと
4.農業委員会の証明の時において認定農業者等であること

また贈与者の農地等のうち「農地の全部」「採草放牧地の2/3以上の面積」及び「準農地の2/3以上の面積」について一括して贈与を受ける必要があります。なお「農地等」は詳細な要件が定められていますので、贈与する農地が要件に該当するかを国税庁のホームページで事前に確認しておきましょう。

特例を受けるためには、贈与税の申告の際に書類の提出が必要となるほか、納税猶予額及び利子税の額に見合った担保の提供が必要です。また贈与税の申告期限から3年目ごとに、引き続きこの特例の適用を受けるための「継続届出書」を提出しなければなりません。

この特例の適用を受けた場合には贈与税の納税が猶予されますが、農地の譲渡、農業の廃止、受贈者が贈与者の推定相続人に該当しなくなった、継続届出書を提出しなかったなど、一定の事由に該当した場合には猶予されていた贈与税を納付する必要があります。

あくまでも推定相続人が継続して農業を営んでいる場合に適用される特例です。

贈与の後に相続が発生したらどうなる?

では農地の贈与の後に相続が発生した場合には、猶予されていた贈与税の納税はどうなるのでしょうか。受贈者が先に死亡した場合には贈与税の納税は免除されますが、その農地等は受贈者の相続財産として相続税の課税対象となります。

また贈与者が先に死亡の場合には、贈与を受けた農地等は贈与者から相続したものとみなされ、贈与者が死亡した日の価額で相続税の課税対象となります。ただしその農地については贈与税の猶予ではなく「農地等に対する相続税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けることができ、引き続き農地等に対する相続税の納税が猶予されます。

このように農地の贈与については、農地の保護や農業を営む人の育成を目的として税制面で優遇される場合があります。
 

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