2021.3.15
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相続

不動産売却にかかる税金・費用はどれくらい?節税方法・特例を解説

(画像=VitaliiVodolazskyi/stock.adobe.com)
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相続した不動産を売却したいと考えるとき、税金や売却費用に関する疑問などをお持ちではないでしょうか。不動産の売却は高額な取引となるだけに、税金やその他のコストが不透明なままでは、売却そのものをためらってしまうかもしれません。

そこで当記事では不動産の売却に関連する税金や諸費用について1つずつ丁寧に解説していきます。記事を読み終えたときには大まかな税額やコストをイメージできるようになっているでしょう。また、もう1つの関心事である「少しでも税金を安くしたい」という方向けに節税に役立つ制度や特例についても解説します。
 

目次
1.不動産売却の流れ|いつ税金が発生するのか
2.不動産売却でかかる4つの税金とその他費用
3.譲渡所得とは?譲渡所得税の計算
4.不動産売却で使える6つの控除と特例
5.難しいと感じたら不動産のプロに相談しよう
まとめ:売却の際はプロセスを正しく理解し、控除や特例の情報も積極的に入手を

1.不動産売却の流れ|いつ税金が発生するのか

不動産売却の大まかな流れは、以下のようになります。
 


不動産の大まかな価格相場をチェックしたうえで不動産会社に査定を依頼し、その査定額での売却活動に納得ができれば不動産会社と媒介契約を結びます。この時点までは特に費用が発生していないため、税金との関わりもまだありません。

売却活動では、不動産会社が物件データベースへの登録を行い、宣伝活動をしながら購入希望者を募ります。そこで購入希望者が現れたら、売主は内覧を受け入れて物件を案内します。購入希望者と交渉を行い、合意することができれば売買契約の締結に進みます。

図にも色を付けているようにこの段階から、税金が発生します。ここで発生する税金は印紙税といって、契約書に貼付する印紙代金として納税します。

そして最終的な代金の決済と物件の引き渡しを行って不動産の売却は完了となり、ここでも税金が発生します。抵当権が設定されていてそれを抹消する場合や売主負担で物件の登記を行う場合は登録免許税、そして物件譲渡によって利益が出た場合は譲渡所得税、そしてその譲渡所得税の額に応じて住民税が発生します。登録免許税は登記のタイミングで必要になる税金ですが、譲渡所得税と住民税は翌年の納税となります。

これらの一連の流れを整理して、税金が発生するタイミングについて図で示すとこのようになります。
 


先ほども解説したように、譲渡所得税については物件の譲渡で利益が発生したときにのみ課税されます。つまり譲渡益がなければ確定申告の必要はなく、譲渡益に対する住民税が発生することもありません。
 

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2.不動産売却でかかる4つの税金とその他費用

不動産売却では、4つの税金と関わることになります。すべての売却で4つの税金がかかるわけではないので、課税の有無も含めて1つずつ解説します。

2-1.不動産売却でかかる税金

(1)印紙税
印紙税は、不動産取引に関わらず、個人・法人共に、契約に際して作成される契約書・領収書など特定の文書に課される税金です。印紙税は印紙を購入することで納税するため、売買契約書を作成するときが納税のタイミングとなります。不動産の売却では、売主と買主との間で不動産売買契約書が作成され、契約を締結します。この契約書に購入した印紙の貼付をすることで印紙税は納付されたとみなされます。

印紙税額は売買代金によって異なります。以下が、その一覧表です。

▽売買代金に対する印紙税額の違い
売買代金(契約金額) 印紙税額
10万円超 50万円以下 200円
50万円超 100万円以下 500円
100万円超 500万円以下 1,000円
500万円超 1,000万円以下 5,000円
1,000万円超 5,000万円以下 1万円
5,000万円超 1億円以下 3万円
1億円超 5億円以下 6万円
5億円超 10億円以下 16万円
10億円超 50億円以下 32万円
50億円超 48万円


なお、上記の一覧表は軽減措置を適用した印紙税額です。この軽減措置は平成26年4月1日から令和4年3月31日までのもので、10万円以上の売買契約に適用されます。

基本的に契約書は売主と買主の双方が持っておくために2通作成されるので、2通それぞれに上記一覧表にある印紙税が必要になります。基本的には相手方の印紙は相手が自分で用意するのが通例です。


(2)登録免許税
登録免許税は、不動産の売却によって所有権が移転したことを登記する際に発生する税金です。その他にも登記されている抵当権(ローンを利用したときに登記される権利)を抹消するための手続きでも登録免許税が発生します。

一般的に不動産の売買で所有権移転登記に関する登録免許税は買主が負担するので、売主の負担になることはないと考えてよいでしょう。なお、抵当権抹消登記については1筆あたり1,000円です。戸建て住宅など土地と建物がそれぞれ登記されている場合は2筆なので、2,000円です。

(3)譲渡所得税
不動産を購入したときよりも売却したときの価格が高い場合は譲渡益が発生するので譲渡所得税の課税対象となります。譲渡所得税が発生すると、自動的に住民税も発生します。

譲渡所得税は売却する不動産の所有期間によって税率に2倍程度の違いがあります。長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや税率についての詳細は、後述します。

(4)住民税
譲渡益が発生すると、譲渡所得税とともに住民税が発生します。住民税の税率についても短期譲渡所得と長期譲渡所得で違いがあります。それぞれの税率は以下のとおりです。

・短期譲渡所得:9%
・長期譲渡所得:5%

譲渡所得税と住民税はセットで考えるべきものなので、譲渡所得税と復興特別所得税、住民税をすべて足した税率を計算すると以下のようになります。この税率を覚えておくのがよいでしょう。

・短期譲渡所得:39.63%
・長期譲渡所得:21.315%

2-2.不動産売却に必要な費用

次に、不動産売却に必要な「税金以外の費用」についても見てみましょう。売主が知っておくべきなのは、媒介を依頼した不動産業者に支払う仲介手数料です。

(1)仲介手数料
不動産業者に買主を見つけるための売却活動を依頼した場合、仲介手数料が発生します。仲介手数料はいくらでもいいわけではなく、上限が定められています。以下が、その仲介手数料の上限です。

▽不動産の取引額と仲介手数料の上限
取引額 仲介手数料の上限
200万円以下 5%
200万円超 400万円以下 4%
400万円超 3%


ほとんどの場合、不動産の売買価格は400万円を超えるので、「400万円超」が適用されることになるでしょう。ここで注意したいのは、「200万円以下」と「200万円超400万円以下」についてもそれぞれが適用されるので、400万円を超える不動産売却の場合は5%の部分と4%の部分、3%の部分がそれぞれ適用されて積算されます。

しかし、これでは計算しにくいので、速算式があります。取引額が400万円超の場合、以下の計算式で仲介手数料の上限額を求めることができます。

売買価格の3% + 6万円 = 仲介手数料の上限

この仲介手数料には消費税がかかりますが、自分名義になっている不動産を売却する場合は消費税の課税対象ではないので、補足しておきます。
 

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3.譲渡所得とは?譲渡所得税の計算

ここでは「譲渡益が発生したとき」のみ課税される譲渡所得税について詳しく解説します。売却を検討している不動産で譲渡益が出るかもしれない見通しがある方はしっかりとマスターしておきましょう。

3-1.譲渡所得とは

税金を管轄する国税庁の定義によると、譲渡所得とは「土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡したときに生じた所得」とあります。これらの資産を売却したときに利益が生じたら、それが譲渡所得です。

なお、事業用の商品や山林などについては譲渡益が発生してもそれは譲渡所得とはならないとも定義しています。

3-2.譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税の税率は、不動産を所有してきた期間によって異なります。5年が境目になっていて、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超えている場合は長期譲渡所得という取り扱いになります。それぞれの税率は、以下の通りです。

・短期譲渡所得:30%
・長期譲渡所得:15%

令和19年まではそれぞれの税率に復興特別所得税がかかるため、上記の税率に加えて譲渡所得に対して2.1%が課税されます。

譲渡所得の計算方法は、以下の計算式です。

売却価格 - (不動産の取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額 = 譲渡所得

この計算式で譲渡所得がプラスになっている場合は、譲渡所得税が課税される可能性があるということです。先ほども少し解説しましたが、短期譲渡所得、長期譲渡所得ともに税率が異なります。これに加えて住民税も短期と長期では税率が異なるので、それらをすべて合算した税率を知っておくのが最も計算しやすいでしょう。

・短期譲渡所得:39.63%
・長期譲渡所得:21.315%

先ほどの計算式で譲渡所得がプラスになっている場合は、不動産の所有期間に応じてそれぞれの税率をかけると譲渡益に対する税額を求めることができます。

3-3.長期譲渡所得と短期譲渡所得

ここまでの解説で、長期譲渡所得と短期譲渡所得とでは税率に2倍もの差があることにお気づきかと思います。なぜ短期と長期で税率が2倍も違うのかについては、理由があります。

短期譲渡所得は言い換えると、不動産の転売利益です。事情によっては5年に満たない期間で引っ越すために不動産を売却することもあると思いますが、かつての不動産バブルでは物件の短期転売が繰り返され、それが地価や不動産の高騰を招きました。そういった投機的な不動産取引を抑制するために短期譲渡所得について高い税率が設けられました。
 

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4.不動産売却で使える6つの控除と特例

先ほど解説した譲渡所得税の計算式には、特別控除額がありました。不動産の売却ではさまざまなケースに応じて控除や特例などが用意されているので、使える控除や特例はしっかりと適用して売却コストを抑えましょう。

(1)居住用財産の3,000万円特別控除

売主自らが居住している不動産の売却であれば、3,000万円の特別控除があります。これは最も適用される可能性が高く、なおかつ控除額が大きいので自身で住んでいる(住んでいた)住宅を売却する場合には適用を検討するべきでしょう。

この特別控除については、短期譲渡所得や長期譲渡所得といった区別がありません。自己居住の不動産であれば所有期間に関係なく特別控除の適用が受けられます。

ただし注意したいのは、この特例を適用するために一時的に居住したと見なされる場合や、別荘など居住ではなく趣味や保養のために購入した不動産には適用されないことです。

(2)マイホームを売ったときの軽減税率の特例

先ほどの自己居住用の不動産については、マイホームを売ったときの軽減税率を適用できる特例があります。所有期間が10年を超えていることや適用のためには確定申告が必要になるなどのルールはありますが、条件に合致するマイホームを売却する人にとっては他の特別控除などと併用も可能なので、譲渡所得に対する高い節税効果があります。

この特例では6,000万円を境に税率が定められており、それぞれ復興特別所得税を加算すると税率は以下のようになります。

・6,000万円以下の部分:10.21%
・6,000万円超の部分:15.315%

先ほど解説した譲渡所得税の税率と比べるとかなり低くなるので、ぜひとも適用したい特例です。

(3)マイホームを買い換えたときの特例

ここまでの解説は不動産の売却で譲渡益が発生したケースを想定していますが、逆に買ったときよりも売ったときのほうが価格が安くなる、つまり損失が出ることの方が多いでしょう。そんなときにもマイホームの買い替えであればぜひ利用したい特例があります。その特例は「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」といいます。

この特例では売主自らが居住しているマイホームの譲渡で損失が発生した場合、その損失額を他の給与所得や事業所得などと損益通算をして差し引くことができます。つまり、マイホームの売却で損失が出たとしても給料や事業収入などの所得額から差し引くことができるため、本業の節税になります。

(4)被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

その家に1人で住んでいた人が亡くなり、空き家になった家についてはその住宅を取り壊して譲渡した、耐震改築をしたうえで譲渡したなどの場合に最高3,000万円の控除が適用されます。

(5)相続した不動産に使える取得加算の特例

相続によって取得した不動産の売却は、「3年10か月以内にするべき」という定説があります。その根拠となっているのが、この「相続した不動産に使える取得加算の特例」です。

相続によって取得した不動産は、相続により現所有者になった人が買ったわけではなく、取得費用を知るにはその不動産を買ったときにまでさかのぼります。しかし時代が違えば不動産の価格も大きく異なるため、現在の相場で売却したとしても当時の購入価格とは大きな開きがあるかもしれず、多額の譲渡所得が発生してしまいます。そこで適用できるのが、この特例です。

現所有者が不動産を相続したときには相続税を納めている可能性があります。そこで、この特例では相続税の負担分に対して半分の額を当時の取得額に加算できます。相続税が大きいほど取得費用が大きくなるため、譲渡所得が少なくなります。場合によっては譲渡所得がなくなることもありますが、その期限が相続から3年10か月以内です。先ほど相続不動産はその期間内に売却すべきと述べたのは、この特例の期限があるからです。

(6) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

住宅ローンを利用してマイホームを購入する人は多いと思いますが、住宅ローンの返済中にマイホームを売却したものの売却金額が住宅ローンの残債を下回ってしまい、譲渡損失が出た場合は他の所得との損益通算が可能です。それを可能にしているのが、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」です。

なお、この特例を適用した場合は住宅ローンの残債と売却価格の差額が損益通算および繰越控除の上限金額となります。
 

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5.難しいと感じたら不動産のプロに相談しよう

ここまでの解説をお読みになって、「やはり税金に関することは難しい」とお感じになった方も多いのではないでしょうか。複雑な言葉、難解な数字がたくさん登場するため理解しにくい部分も多々ある一方で、不動産売却の税金は取引額が大きくなるだけにしっかりと税金についての知識を持っておかないと大損をしてしまったり、逆に税務調査を受けてしまったりするなどのペナルティの恐れもあります。

難しいと感じたら、不動産のことは不動産のプロに相談するのが最も確実です。
 

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まとめ:売却の際はプロセスを正しく理解し、控除や特例の情報も積極的に入手を

不動産の売却は取引額が大きくなることも多く、売主と買主のどちらにとっても一生で最大の取引になる可能性があります。それだけにしっかりと売却のプロセスを踏む必要がありますし、売却に関連する税金についても正しい知識を持っておくことが不可欠です。

当記事ではご自身で売却や確定申告、納税などを完結できるよう想定した解説をしていますが、それでも難しいと感じた方は、無理に自己完結する必要はありません。不動産には不動産のプロ、税金には税金のプロ、そしてこれらの知識を横断的に蓄積し、精通しているプロがいます。できるだけ早い段階からプロに相談をして少しでも有利な条件で、なおかつ税金面で不利益を被ることがないよう、円滑な売却が実現できるようにしてください。
 
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