2018.8.1
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相続

必ずしも相続する必要はない。相続放棄とは?

(写真=comzeal images/Shutterstock.com)
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「親が多額の借金を残して死んでしまった」というように、そのまま相続すると相続人が多大な犠牲を払わなければならない状況になったらどうすればよいのでしょうか。民法では、このようなときの救済措置として相続放棄と限定承認というものがあります。資産よりも負債が明らかに多いときにはすべてを相続する必要はありません。今回は、相続放棄と限定承認の制度の特徴と注意点について解説します。

相続放棄とは一切の相続財産を放棄すること

通常の相続では、相続人は被相続人(亡くなった人)の権利義務を一切引き継ぎます。問題は、現金や不動産などプラスの価値があるものだけではなく、借金や税金の滞納などマイナスの財産、いわゆる負債も含まれることです。親の借金を背負って子どもが自己破産するというケースもあります。 

例えば、被相続人が2,000万円分の株式と4,000万円分のローンを残したとします。2人の子どもが法定相続割合で相続すると、それぞれ1,000万円分の金融資産と2,000万円の借金を背負うことになるのです。このように包括的に相続することを単純承認といいます。負債が資産を明らかに超えていた場合でも、それらをすべて引き継がないといけないのでしょうか。実際はそんなことはありません。

その場合は、相続放棄という選択肢があります。法令にのっとって手続きをすることで、負債も含めて一切の財産を相続せずにいられるという制度です。相続放棄をしたい場合は、家庭裁判所へ相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内に手続きを行わなければいけません。必ずしも被相続人が亡くなったときからではなく、相続人が自分に相続権があることを知ったときから3ヵ月です。この期間内であってもいったん相続放棄が成立すると、後から取り消すことはできないため、選択する際には熟慮が必要といえます。ただし、民法上の契約に準じて取り扱われるため、詐欺や強迫、錯誤(勘違い)などによる場合は例外となり、取り消しの余地は残されています。相続放棄をするとその相続人は初めから「いなかったこと」になるため、代襲相続もできなくなる点は注意が必要です。手続きの概略としては、申述書を戸籍謄本などの添付書類とともに被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し込みします。

後述する限定承認と違って、相続放棄は各相続人が単独で申請可能です。ところで相続税では法定相続人の数から基礎控除額を計算します。相続放棄した人は上記のとおり「はじめからいなかったこと」になりますが、税務上は相続放棄した人もこの人数に含めて計算されます。

限定承認とはプラス財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ方法

限定承認は負債も相続しますが、資産の額を超える部分は引き継がないという方法です。プラスもマイナスも同じ分だけ相続できるのです。例えば、相続財産が2,000万円分の不動産と4,000万円の借金という場合、相続する負債は2,000万円になります。一方、不動産はすべて相続可能です。ただし、相続放棄と違い、限定承認は相続人が全員で共同して行う必要があります。また、相続の開始があったことを知った時から3ヵ月に以内に手続きしなければならない点は相続放棄と同様です。

もう一つ相続放棄と異なるところは、家庭裁判所に申し込む際に財産目録を提出しなければならないことです。土地、建物、預貯金や株式などの金融資産、それぞれの一覧表を裁判所の書式で作って申述書に添付します。

それぞれの特徴と注意点

相続放棄と限定承認、それぞれの特徴と注意点を説明します。
相続に一切関わりたくない場合、相続放棄は有効です。もしも後で知らない借金が出てきたとしても、支払う義務はなく、手続きも単独でできるので限定承認ほど手間はかかりません。ただし、思い出の品や自宅など、売ってもたいした額にはならないが相続人本人にとっては価値あるものも手放すことになります。また、自分たちが相続放棄をすることで、身近に相続する人がいなくなり、会ったこともないような遠い親戚が知らない間に相続人となって被害がおよぶ可能性もあります。そのため、しっかり相続人調査をしてから臨んだほうがよいでしょう。
限定承認のよいところは資産も引き継げる点です。「負債を負ってもいいから、思い入れのある品物を手放したくない」というときに使えます。注意点は、相続人全員で行う必要がある点です。もし反対する人がひとりでも出た場合には、手続きが滞ってしまう可能性があります。また、財産目録を作る手間もかかり、これらを3ヵ月以内にまとめて家庭裁判所へ申述しなければならないので、限定承認しようとする相続人は非常に忙しくなるでしょう。

共通して注意したいのは、明確に意思表示をしなくても単純承認したことになる場合があることです。例えば、故人の預金をおろして使ってしまうと、相続する意思があるとみなされ、相続放棄や限定承認をせずに普通の相続をしたことになってしまいます。

相続開始前から準備をしたい

相続の方法には単純承認と相続放棄、限定承認の3つがあります。資産よりも負債のほうが多い場合は、後の2つが有効です。ただし、どちらも相続があることを知ってから3ヵ月以内に手続きをする必要があります。相続人や財産の調査、書類の用意には時間がかかるので、なるべく早く動くことが重要です。財産を残す人の立場としては、一覧表や親族関係の表などは作っておいてあげるとスムーズになるでしょう。

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