2018.10.29
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相続

遺産分割が終わらないとどのようなデメリットが?

(写真=thitikan chuachan/Shutterstock.com)
(写真=thitikan chuachan/Shutterstock.com)
相続が発生し、被相続人が遺言書をのこしていない場合などには遺産分割協議が行われることになりますが、遺産分割協議がまとまらないケースもあるでしょう。今回は、遺産分割が終わらないとどのようなデメリットがあるのかをお伝えしていきます。

遺産分割が終わらないとさまざまな問題が

相続が発生すると、被相続人の財産は相続人全員の「共有」財産となります。まずは、その場合にどのような問題が起きるのかをお伝えします。

1.財産の処分(利用)ができない
共有財産となった場合、その財産を処分(利用)するには相続人全員の同意が必要となります。そのため、「不動産を購入希望の業者に売却したい」「現金を口座から引き出して葬儀費用や相続税の納税資金に充てたい」という場合にも、相続人の中に一人でも同意しない人がいる場合には、被相続人の財産を処分(利用)することができなくなります。

2.時間の経過と共に相続人が増える場合がある
例えば、父親の相続のときに兄弟3人(長男・次男・三男)のみが相続人だった場合を見てみましょう。このケースで、数年後に長男が妻と子ども一人をのこして亡くなった場合、父親の財産を相続する権利が長男の妻と子どもに相続されます。その結果、父親の財産の相続人は兄弟3人から「次男・三男・長男の妻・長男の子」の4人に増えてしまうのです。遺産分割協議や相続手続きについても、この4人で行うことが必要になります。

さらに、次男・三男が亡くなった場合にはそれぞれの相続人に権利が相続されるため、時間の経過と共に「お互いの関係性が薄い」相続人が増えていく可能性があるのです。少ない人数でもまとまらなかった遺産分割協議が「相続人の増加」「あまり面識のない相続人同士で協議」などの状況が加わると、話がまとまる可能性はより一層低くなるでしょう。そもそも話し合いが進むかどうかも不透明です。

3.マイナスの財産を相続する可能性がある
被相続人に借金があった場合や第三者の連帯保証人になっていた場合など、マイナスの財産があった場合にはその財産も含めて相続することになります。マイナスの財産の存在がわかっている場合にはすべての財産の相続を放棄する「相続放棄」が選択可能です。また、プラスの財産とマイナスの財産を相殺して、プラスの財産が残れば相続をする「限定承認」を行うことで、マイナスの財産の相続を回避できます。

しかし、存在を知らなかった場合にはすべての財産を相続することを認めたことになります。(単純承認)なお、相続放棄・限定承認は、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に申告をすることが必要です。相続放棄は相続人単独で行うことができますが、限定承認については相続人全員が共同で行わなければなりません。

税法上のデメリットは?

このように、遺産分割が終わらないとさまざまなデメリットが生じますが、税法上のデメリットにはどのようなものがあるのかも解説します。

1.配偶者控除・小規模宅地等の特例が適用できない
相続税の申告・納税は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内」に行うことが必要です。遺産分割が終わらない場合にも例外はなく、法定相続分で相続したとして計算をして申告・納税を行う必要があります。その場合、配偶者控除・小規模宅地等の特例は適用できずに申告することになりますので、適用して申告をした場合と比較して相続税の負担が大きくなりがちです。

遺産分割がどうしても終わらない場合には、10ヵ月以内の申告・納税の際に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出したうえで3年以内に遺産分割を終えるように心がけましょう。その後、配偶者控除・小規模宅地の特例を適用した申告書を提出し「更正の請求」を行えば、払いすぎた税金が戻ってきます。しかし、時間と費用がかかり、デメリットのほうが大きいでしょう。

2.納税猶予制度が活用できない
農地・非上場株式(自社株式)を相続した場合には、それぞれに一定の要件を満たせば相続税の納税猶予制度が活用できますが、遺産分割が完了していない場合にはこの制度を活用することができません。相続発生後も後継者が引き続き農業・事業を継続したくても、遺産分割が終わっていなければ納税猶予のメリットを活用できずに税負担が発生し、事業承継に影響が出てしまうことも考えられます。

3.物納ができない
相続税をはじめ国税は、納期限までに金銭で一括納付することが原則です。しかし、それが困難な場合には、申告書の提出・担保提供をすることによる「延納(年賦で相続税を納めていく)」のほか、相続財産を金銭の代わりとして納める「物納」ができます。ただし、物納については遺産分割が終わらない場合には、相続財産の所有権が決まっていない状態となっているため、物納できる財産の要件に該当せず、認められません。

相続財産の評価額が大きく相続税額も多くなる場合、相続財産の一部を売却して納税資金を確保するケースもあります。しかし、遺産分割が終了していない場合には売却はもちろん物納もできません。そのため、納税資金が確保できない場合には相続人自身の財産を売却するなどして納税資金を確保する必要があります。

スムーズな遺産分割を行うために

今回解説したように、遺産分割がまとまらずに時間が経過していくと、金銭的な負担はもちろん、精神的な負担や時間的な手間などがかかっていくことになります。相続税の負担を減らすために急いで遺産分割の話を進めた結果、相続人間の関係が悪化してしまっては本末転倒です。しかし、相続発生後はできるだけ速やかに遺産分割の話し合いの場を持つことが大切となります。

また、財産をのこす側は、自身の遺志(意思)を死後に伝えるために、遺言書などで家族への想いや財産の分割方法を伝えることが大切です。さらに、生前に財産の分け方について話し合いの場を設けるなど、できるだけスムーズな遺産分割が行えるような行動をとっていくことが、財産をのこす側の責務・責任だといえるでしょう。

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