2018.12.27
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相続

民法改正で自宅の相続の方法が変わる?

(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)
(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)
2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、同年7月13日に公布されました。民法のうち相続法に関する改正が行われたのですが、これは1980年以来の大きな見直しとなり、原則公布日から1年以内に施行されることになっています。(一部法律を除く)今回の改正で、自宅の相続について見直しが行われました。

夫が亡くなった後の妻(配偶者)の居住権について改正されたのですが、今回は「この内容がどのようなものなのか」「どのようなメリット・デメリットがあるのか」について解説します。

これまでの自宅の相続方法は?

例えば、夫が亡くなった場合、自宅を所有していれば当然のことながら他の金融資産などの財産と共に相続財産となります。また、遺言書がなければ遺産分割の対象となり、誰が相続するかを協議によって決めることが一般的です。相続人が妻と子どもだった場合、「これまで同居していた妻が自宅を相続し、金融資産などほかの財産は子どもが相続する」「今後の生活のことも踏まえて自宅の他に金融資産の一部も妻が相続する」といった分割方法も考えられます。

円満に相続が進めば問題ないのですが、そうはいかないケースも少なくありません。

・子どもが現金を相続することを主張し、妻は自宅を相続できてもその後の生活資金が確保できない
・子どものうちの一人が遺留分を主張した場合、自宅以外の相続財産の額によっては代償金を妻の財産から支払うことになり、現金がない場合には自宅を売却することになってしまう
例えば、上記のようなケースも考えられます。また、夫が自宅を第三者に遺贈する旨の遺言を遺していた場合や、相続財産に債務などのマイナスの財産が多く相続放棄をした場合、遺された妻は自宅からすぐに出ていかなければならない状況になることもあるのです。このようなことが起きると、遺された妻の生活基盤が確保できなくなるため、妻(配偶者)の保護を図る必要性から今回の改正に至り、居住の権利を保護することになりました。

配偶者居住権が保護されるようになる

今回の改正では、配偶者の居住権を「短期的」と「長期的」に認めていますので、それぞれの概要について解説します。

・配偶者短期居住権(配偶者の居住権を短期的に保護するための方策)
こちらは自宅が遺産分割の対象となり誰が自宅を相続するか決まっていない場合や、自宅からすぐに出ていかなければならない状況になった場合の居住権の保護となり、相続財産として考慮されません。。遺産分割協議が終了し自宅を誰が相続するかが決まるまでの間(最低6ヵ月間は保障)も活用が可能です。また、新たな自宅の所有者から消滅請求(立ち退き)を受けてから6ヵ月間は居住する権利があり、その間に新居を見つけるための準備などを行うことになります。

・配偶者居住権(配偶者の居住権を長期的に保護するための方策)
こちらは自宅について、配偶者に終身または一定期間の「居住権」を認めることで、相続後の配偶者の生活基盤を守るという内容になっています。例えば、相続財産が自宅4,000万円・現金2,000万円で相続人が妻と子の2人のケースです。妻が自宅を相続し子の遺留分を侵害しないようにすると、妻は現金500万円、子が現金1,500万円を相続することになり、妻が相続する現金が少なく相続後の生活に不安を残すことになります。

今回の改正では自宅の財産価値について、建物の耐用年数・築年数や配偶者の平均余命などを考慮した「負担付所有権」と配偶者が自宅に住む権利の価値である「配偶者居住権」に分けることとなりました。これによって上記のケースの場合、負担付所有権・配偶者居住権をそれぞれ2,000万円とすると、妻が居住権2,000万円と現金2,000万円、子どもが所有権2,000万円といった分割方法も可能です。

また、妻の手元に現金が残り、居住権と共に他の財産も取得でき相続後の生活基盤を守ることができます。なお、この「配偶者居住権」は、法律上当然に与えられるものではなく、遺産分割の際に配偶者が取得できるほか、遺言などによって配偶者に取得させることもできます。

制度導入のメリット・デメリットは

このように配偶者居住権を活用することによって、「遺された配偶者が短期的には当面の居住を確保できる」「長期的には生活基盤が守れる」というメリットがあります。反面、次のようなデメリットや問題点も想定されています。まずは、相続財産としての「所有権」「居住権」の価値(評価額)がどれくらいになるかという点です。

先述したとおり、建物の耐用年数・築年数や配偶者の平均余命などを考慮してそれぞれの額が決まりますので、遺産分割時の取得財産額の他、相続税の計算時にも影響してきます。まだ、実務面で評価の実績がないため、実際に制度が導入された後の評価方法などを注視していくことが必要です。また、固定資産税についても問題点として挙げられています。

所有権を相続した相続人は所有している期間、毎年固定資産税の負担が必要です。住んでいない自宅の固定資産税を負担することになりますので、これを巡って新たな問題や争いが起こる可能性もあるでしょう。

この改正については「公布の日から2年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行されることとなっており、まだ施行までに時間があります。そのため、配偶者居住権を活用する前に「活用した場合にどのような影響があるのか」について充分に検討しておくことが賢明です。

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