2019.1.4
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相続

民法改正で被相続人の預貯金の取り扱いが変わる

(写真=dindumphoto/Shutterstock.com)
(写真=dindumphoto/Shutterstock.com)
2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、同年7月13日に公布されました。民法のうち相続法に関する改正が行われたのですが、その改正の中の一つで、相続財産である預貯金の取り扱いが変更されることになりました。今回はこの法律の内容や、メリット・デメリットについて解説します。

これまでの預貯金の取り扱い

相続財産の中で多くの割合を占める預貯金。2016年の相続税の申告状況を見ても相続財産の金額のうち現金・預貯金等の割合が31.2%、土地・家屋を合わせた不動産の43.5%に次ぐ財産となっていて、その割合は年々増えています。現行の制度では被相続人が遺した預貯金については、他の相続財産と同様に遺産分割の対象となり相続人全員の共有財産となります。

そのため、遺産分割協議終了前に相続人の一人が単独で預貯金を引き出すことはできません。これでは遺された配偶者の生活費や被相続人の葬儀費用の支払などがある場合でも、預貯金を利用することができません。また、被相続人に債務があった場合も同様で、遺産分割協議が終了するまで相続人が一時的に立て替えなければならないなどの問題も起こっていました。

このような相続人にとって金銭的な負担となる問題を解消するため、今回の民法改正では遺産分割協議終了前でも預貯金が使えるよう、新しい制度が創設されました。

一定条件のもと「仮払い」が可能に

今回は2つの「仮払い」制度について改正・新設され、一定の条件をもとに遺産分割協議終了前でも預貯金が引き出せるようになりました。その内容について順にお伝えします。

1.家庭裁判所に申し立てをする
こちらは従来からある「仮分割の仮処分」(保全処分)の要件が緩和されました。保全処分は「急迫の危険の防止の必要がある」場合にのみ仮払いが認められていて、利用されることはほとんどありませんでした。これを「相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるとき」という要件に緩和をしたのです。
そのため、債務の返済や生活費への充当などのための仮払いが認められるようになりました。家庭裁判所に遺産分割の審判または調停を申し立てたうえで、預貯金の仮分割の仮処分を申し立てることになります。なお仮払いの額については「他の相続人の利益を害しない」範囲で認められることになります。

2.金融機関に払戻しの請求をする
こちらは預貯金がある金融機関に直接請求する方法で、今回の改正で新設された内容となります。各相続人が単独で金融機関に払戻し請求をすることができ、金融機関ごとの払戻し限度額は150万円です。単独で払い戻しをすることが出来る額の計算式はこちらです。

・相続開始時の預貯金額×3分の1×当該払戻しを求める相続人の法定相続分

以上、2つの方法で仮払いができるようになったのです。なお、いずれの方法の場合も仮払いされた預貯金については、その相続人が遺産分割(一部分割)により取得したものとみなされます。そのため、遺産分割の際は実際の相続財産から仮払いの額が控除されることになります。

改正後のメリット・注意点は

上記の2つの方法で預貯金の仮払いができるようになり、遺産分割協議を待たずに被相続人の財産を活用できる幅が広がったといえるでしょう。しかし、家庭裁判所へ申し立てをする場合は仮払いが行われるまでに時間と手間を要することが考えられます。金額についても上限は設けられていませんが、その額がいくらになるのかは家庭裁判所の判断に委ねられることになるでしょう。

また、金融機関への請求についても請求する相続人の相続分を金融機関に証明するために、戸籍謄本の取得や相続人関係図などを作成し、法定相続人の数を明らかにする必要があります。なお、仮払い制度については、この法律の公布日(2018年7月13日)から1年以内に施行されることとなっており、それまでの間に具体的な手続き・運用などについての方向性が示されるでしょう。そのため、今後の動向については注視していく必要があります。

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