2019.5.27
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相続

2019年度税制改正で導入された「個人版事業承継税制」とは?

(画像=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)
(画像=Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com)
2019年度税制改正の目玉の一つが、「個人版事業承継税制」の導入です。これまでも事業承継を円滑にすべく税制上の優遇は行われていましたが、対象は限られていました。今回の税制改正により、その対象が大幅に拡大することになりました。

平成31年度税制改正で導入された「個人版事業承継税制」とは

個人版事業承継税制とは、平たく言うと「相続税・贈与税の納税猶予制度」です。この制度を活用することで、個人事業主の事業用資産に関して、相続が発生した場合だけでなく、生前贈与を行った場合にも、その課税価格に対応する相続税や贈与税の納付を全額先延ばしすることができます。

税負担を軽くする事業承継税制はすでにありますが、対象は法人の株式(いわゆる自社株)に限定されています。しかし、歯科医院や士業、飲食店、小売業、農業など、中小事業の担い手の多くは個人事業主です。個人事業主については税制優遇がほとんどないため、承継時に重い税負担を強いられ、最悪の場合では廃業を選択することになります。

この状況を改善すべく、2019度税制改正で個人事業主についての事業承継税制が創設されました。

個人版事業承継税制の特徴

個人版事業承継税制には、以下のような特徴があります。

後継者の納税負担がゼロ

本制度を活用することで、事業承継に係る部分の相続税・贈与税の負担がゼロになります。ただし、あくまでも納税が猶予されるだけで、税金がなくなるわけではありません。

納税猶予の対象

納税猶予の対象となる資産は、青色申告書の貸借対照表に記載されている事業用資産に限られます。具体的には、以下のような資産が対象になります。

・土地・建物(土地は400㎡、建物は800㎡まで)
・機械・器具備品(工作機械やパワーショベル、冷蔵庫や診療機器など)
・車両・運搬具
・生物(乳牛等、果樹等)
・無形償却資産(特許権など)

相続税だけでなく贈与税も対象

自社株に関する事業承継と同じく、相続税・贈与税ともに納税猶予となります。
 

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注意点

個人事業主の事業承継に関する税負担が軽くなることはいいことですが、注意点もあります。

年齢制限や期限などの要件を満たす必要がある

多くの特例制度と同じく、個人版事業承継税制も要件を満たす必要があります。

・年齢
贈与税に関しては、受贈者が贈与時において18歳以上(2022年3月31日までの贈与については20歳以上)であることが必要です。

・対象期間
2019年1月1日から2028年12月31日までの相続や贈与が対象です。

・担保の提供
猶予された税額に見合う担保の提供が必要です。

この他、贈与税の納税猶予については、受贈者側における事業従事や事業用資産の保有などといった他の要件を満たす必要があります。

事前の認定や計画書の提出が必要

本制度を活用するには、事前に経営承継円滑化法に基づく認定が必要です。また、2019年度から5年以内に、承継計画を都道府県に提出しなくてはなりません。さらに、本制度を活用した承継を行った後も、3年ごとに継続届出書を所轄の税務署に提出する必要があります。

小規模宅地等の特例との選択適用

個人事業主がこれまで事業承継で活用してきた既存の税制に「小規模宅地等の特例」があります。この制度を活用することで、事業用の土地であれば400平方メートルまでは最大80%減税することができます。

個人版事業承継税制は、小規模宅地等の特例と併用することができません。そのため、事前にどちらが有利かを検討しておく必要があります。

対象資産にかかる事業を廃止した場合には全額納付

本制度は、あくまでも納税の猶予に過ぎません。事業を継続している間は猶予されますが、本制度の対象となった資産に関する事業を廃止した場合には、利子税とともに相続税や贈与税を納付しなくてはなりません。

個人版事業承継税制は、メリットの大きい制度である一方、満たすべき要件も細かいのが特徴です。専門家に相談しながら事前に検討する必要がありそうです。
 

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