2019.6.7
/
相続

不動産事業者がこれまで相続の相談相手となれなかった理由

(写真=ingae/Shutterstock.com)
(写真=ingae/Shutterstock.com)
相続で一番避けたいのは「親族間でももめること」です。もめる一番の理由は「遺産分割」。どの財産を、誰が、どれくらい相続するのか、ということですね。そこに損得感情が絡み、エスカレートしていきますと「相続」が「争族」になってしまいます。

そして、財産の中でも分けにくい資産は「不動産」です。その不動産が財産の約7割を占めています。
つまり、相続とは不動産の扱いが一番のカギであり、相続対策とは所有不動産をどうするかを決めること、と言っても過言ではありません。
となると、そこに関与すべきプロは、不動産に関する専門的な知識と豊富な取引経験を持ち、地域の不動産事情にも明るい地元の不動産業者ということになります。

しかし、ここにひとつ問題がありました。
それは何かというと、実は多くの不動産事業者は相続相談をやらないのです。

相続相談をきっかけに不動産が何らかの形で動くことが多いので、不動産事業者にとって多くのビジネスチャンスがあるように思えます。
しかし、なぜ多くの不動産事業者は相続相談をやらないのでしょうか?

それは、不動産事業者のこれまでの経営スタイルを理解するとわかります。

主に不動産物件の売買の仲介をメイン事業としている不動産仲介事業者の主たる収益源は「売買仲介手数料」です。
物件の売買が成立した時に物件価格の3%相当を売主、または買主から受領します。
売主、買主の双方から仲介を依頼されていた場合には両者から3%ずつの合計6%相当を受領します。

不動産仲介事業者は、仲介手数料を毎月コンスタントに上げるために、
そこで働く営業担当者たちに対して、通常、実績に応じたインセンティブ(報酬)が設定されています。
営業担当者は自分の給料を稼ぐためにも毎月一件でも多く成約を上げようと努めます。これは一社だけでなく、
ほぼすべての不動産仲介事業者でそうなっています。ですので、その地域での不動産売買案件に対しては多くの不動産担当者がものすごいスピードで関わろうとします。
結果的に、不動産仲介営業担当者に求められる一番の資質は「スピード」ということになります。

例えば、住宅購入でいうと住宅購入検討者に対して、どこよりも速く物件を紹介し、
「これはいい物件ですよ!すぐ売れてしまいますよ!」などとちょっとあおり気味に説明してスピード感ある意思決定を迫ったりします。
早い時には、物件の売り情報が出てから1週間と経たずに契約に至ることもあります。
営業担当者は、なかなか意思決定しない時間のかかりそうなお客様は追わず、短期間で決着がつく手数料が上げやすい取引に自分の限られた時間を使います。

さらに言うと、出来れば一度の取り引きで売り手と買い手双方から3%ずつ、
合計6%の手数料を取るために、出来る限り自社で売却依頼を受託している物件を買ってもらうように誘導する傾向にあります。
仲介報酬が増えることは営業担当者にとってはインセンティブが増えることになりますから、こういう物件こそが営業担当者が「売りたい物件」ということになります。
「ウチにしかない最良物件があります!」というような誘い文句を使って購入希望のお客様を来店誘導している営業担当者がいますが、
その物件は、お客様にとって最良の物件なのではなく、営業担当者にとって(6%が取れる)最良な物件なのです。

不動産仲介会社の営業担当者はスピード重視、インセンティブ重視で営業を進めます。
そのため、自分、もしくは自社にとって良い取引になるように、場合によっては顧客に対して、
情報を隠したり、小出しにしたりしながら、意図的にお客様を誘導していくのです。
なぜこんなことが出来るのかというと、不動産においては、お客様が持っている知識・経験・情報と不動産仲介担当者が持っている知識・経験・情報の差が大きいからです。
不動産を買うというのは普通の人にとっては一生のうちに何度もあることではありません。
そのためほとんどのお客様は不動産購入において「素人」です。「素人」対「プロ」ですから、そこには大きな「情報格差」が存在することになります。
営業担当者は契約のスピードを速めるためにこの「情報格差」を、意識的になのか無自覚的なのかはともかくとして、利用しています。
営業担当者が「売りたい」物件を買ってもらうためのシナリオで営業を展開していき、購入検討者はそのシナリオに乗って判断してしまうというケースが多くあるのです。

このようになってしまうのも一般のお客様が不動産の物件情報や不動産取引にかかる税金や法律などをほとんど知らないことに起因しています。
確かに不動産取引には、物件情報、市況や相場、税金、法律、建築知識など必要となる専門知識は多いのですが、
その知識を一般の人がすべて身につけてから不動産を購入する、などというのはまったく合理的ではありません。
本来は、こういう情報格差があるからこそ不動産営業担当者は、誠実にお客様がわからないことを丁寧説明して、
プロとして公正中立に不動産を紹介していくべきなのです。しかし、一方で彼らにはスピードが求められています。
ゆっくりやっているうちに他社の営業担当者に案件を持っていかれたら元も子もありません。

なぜ、不動産事業者は相続相談をやらないのか、というと相続相談はいくらビジネスになると言われてもスピード感がまったく合わない業務だからです。
相続はいつ発生するかわかりません。今、相談を受けても相続が発生するのは10年後かもしれません。
そういう仕事に時間を使うのは毎月勝負をしている仲介担当者としては合理的ではないということになるのです。

しかし、だからと言ってこれまでのスタイルのままでこの先もやっていけるのか、というと恐らくそうではないでしょう。
ここに、不動産業界がこれから直面していく問題です。
 

>>【無料eBook】これだけは知っておきたい 相続のキホン

>>相続の専門家に相談する

【オススメ記事】
民法改正で遺言執行者の権限が明確化される
民法改正で不当な財産処分ができなくなる
相続の面倒は銀行にお任せ!遺言信託とは
民法改正で相続の効力等に関する見直しが行われる
準確定申告が必要な人・不要な人

NEXT 相続する資産の価値を把握する ~最近の地価動向は?
PREV 相続トラブルは起こらない、だから相続対策はしていない が8割

関連記事