2019.8.19
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相続

【司法書士の目~VOL.3】「家族信託」は誰に頼めばいい?かかる費用は?

(画像=Billion Photos/Shutterstock.com)
(画像=Billion Photos/Shutterstock.com)
近年、メディア等でも注目されている「家族信託」。私の事務所でもご相談を受ける機会が非常に増えてきました。家族信託についてよく耳にするのが、「誰に頼めばいいか分からない」、「どれくらい費用がかかるものか知りたい」といった内容です。
今回は、皆様のこのような疑問に答えていきたいと思います。

1 「家族信託」は誰に頼めばいい? 

「信託」だから「信託銀行」に頼む?

「信託」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは「信託銀行」などの金融機関でしょう。確かに信託銀行でも信託を利用することはできますが、いわゆる家族信託を行うことはできません。家族信託では、受託者(財産の管理を託される人)を子供などの家族が引き受けることになりますが、信託銀行で行う信託は、手数料を払って信託銀行に受託者をお願いすることになります(なお、信託会社などに手数料を支払って行う信託を「商事信託」といいます。)。また、信託銀行に管理をお願いできる財産は、原則として金融資産だけですから、自宅などの不動産の管理をお願いすることはできません。

金融機関でよく見かける「遺言信託サービス」は、金融機関が遺言書の作成・保管・執行を行うサービスですので、家族信託ではありません。「遺言信託サービス」は、あくまで亡くなった後の財産の承継先を決定する「遺言」です。

家族信託の担い手

それでは、家族信託はどこに依頼すれば開始できるのでしょうか。担い手となる主な専門家を確認してみましょう。

① 弁護士
弁護士は、言わずもがな法律の専門家ですので、あらゆる法律問題に対応することができます。家族信託は、平成19年から施行されている信託法に基づいた制度です。したがって、弁護士であれば家族信託の組成から、組成後に紛争に発展した場合まで、家族信託に関する様々な法的問題に対処することができます。

② 司法書士
司法書士は、不動産登記、商業登記、相続、成年後見などの専門家です。家族信託は、相続や後見と密接に関連していますし、多くの場合不動産を信託するので登記が必要となります。家族信託と司法書士の業務は親和性が高いので、家族信託をはじめる際は司法書士に依頼するケースが一番多いとされています。

③ 税理士
税理士は、税金の専門家です。家族信託を利用する多くのケースでは、相続税などの試算をした上で、将来どのような財産承継をすることが税務上適切であるかシミュレーションをして実施します。

したがって、税理士が家族信託のサポートを行うケースもあります。司法書士や弁護士と連携して行うケースも多くあります。

④ その他
上記のような士業の他に、不動産コンサルタントや行政書士などの方々が担い手となることもあるそうです。家族信託の普及に伴い、今後様々な方が関わっていくことが予想されています

まとめ

家族信託はまだまだ新しい制度です。遺言や相続などと異なり、判例などが蓄積されているわけではありませんので、実務上の解釈や運用が定まっていない部分も多くあります。だからこそ、家族信託について研究を積み重ね、より実績豊富な専門家を選ぶことが何より大切です。

例えば、電話をして直接問い合わせてみる、ホームページなどに十分な案内がされているか確認する、知り合いから紹介を受けるなどの方法が有効でしょう。

また、家族信託の組成にあたっては、ご家族ごとのライフプランに沿って、法務・税務の両面から様々な事項を検討することが非常に大切です。その意味では、複数の専門家でチームを組んでサポートする体制が整っているか確認することも重要です。ちなみに私の事務所では、税理士、弁護士、FP、不動産コンサルタントなどの方々と連携をとりながら家族信託に取り組んでいます。

2「家族信託」にかかる費用は? 

次に、ご質問の多い「家族信託」を始める際の費用についてご説明します。今回は最も一般的な、「信託契約によって不動産と金銭を信託する」ケースで考えてみたいと思います。

ちなみに、信託する際は必ずしも全ての財産を対象とする必要はありません。
家族信託では、主に①登録免許税(不動産を信託した場合)、②司法書士や弁護士などの専門家報酬、③公証人の費用、④その他の実費(郵送費など)、がかかります。
それではそれぞれ具体的にみていきましょう。

登録免許税

不動産を信託した場合、登記の名義を受託者に変更するため登録免許税という税金がかかります。土地については、固定資産税評価額の0.3%(令和3年3月31日までの軽減措置)、建物については、固定資産税評価額の0.4%です。不動産の固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書などで確認ができます。

なお、委託者(財産を預ける人)と受益者(信託から利益をうける人)が同一人物である信託(自益信託といいます。ほとんどの家族信託はこのパターンに該当します)の場合、贈与税や不動産取得税はかかりません。

司法書士や弁護士などの専門家報酬~

家族信託を始めるにあたっては、司法書士や弁護士などの専門家へ契約書作成やコンサルティングなどをお願いするのが一般的です。家族信託を開始するには、法務・税務様々な角度からの検証が必要となるとともに、金融機関、公証役場など関係者との調整も多く必要となりますので、専門家報酬がそれなりに発生します。

一般的に、専門家報酬は「信託財産の評価額」をベースに決定されますので、評価額が高くなるにつれて報酬は高くなります。
ただし、専門家によりコンサルティング内容や報酬規定は異なります。依頼する際はサービス内容に何が含まれる・含まれないのか、どのような場合に追加の報酬が発生するのか、などをしっかり確認しておきましょう。見積書を事前にもらっておくのが良いでしょう。

例えば、弊社の場合、信託財産が金銭のみである場合は金額に関わらず20万円(税別)、信託財産に不動産が含まれる場合には30万円(税別)~と設定しております。

また、多くのケースで、税理士による相続税の試算が行われることになります。その場合、財産規模や不動産の数に応じて、税理士に対する報酬が発生することになります。

公証人の費用

家族信託契約は、非常に重要な契約ですので、後々のトラブルを防止するために公証役場で「公正証書」によって作成するのが一般的です。公証人の費用は、信託する財産の価額、契約書の分量などによって異なります。また、自宅や病院などへの出張を希望される方は別途費用がかかります。

その他の実費(戸籍取得費用など)

その他の実費として、例えば戸籍の収集費用などがあります。家族信託を行う際に、委託者の「推定相続人の調査」を行うケースが多いです。信託で安全・確実な財産承継を行うため、信託開始時点における相続人を確認する必要があるからです。また、登記簿謄本などの取得費用も発生します。

具体例

最後に、具体例をとおして費用を確認してみましょう。

(例) 収益不動産(固定資産税評価額5,000万円)及び金銭(2,000万円)を信託した場合

上記を前提として、弊社で家族信託を行った場合の費用は次のようなイメージとなります。

①登録免許税
約16万円

②司法書士や弁護士などの専門家報酬
約50万円

③公証役場の費用        
約5万円

③その他の費用 
約5万円

合計 約76万円

※信託不動産に借入が残っていない、また、受益者連続型信託(後継ぎ遺贈型信託)ではないことを前提しております。
 
元木 翼 もときつばさ
チェスナット司法書士法人・行政書士事務所 代表
千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。

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