2019.10.23
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相続

【司法書士の目~VOL.8】「家族信託」を開始するまでの流れは?

(画像=fizkes/Shutterstock.com)
(画像=fizkes/Shutterstock.com)
認知症対策の切り札として、近年「家族信託」という制度が注目されています。制度の概要やメリット・デメリットは、書籍やインターネットでも多く紹介されていますが、果たしてご家族だけで家族信託を始めることはできるのでしょうか?

家族信託は、法律上専門家を介して行うことが必須というわけではありませんので、不可能ではありません。しかし、信託スキームの組成には極めて専門性の高い法律や税務の知識が必要ですし、利用方法を誤れば相続後のトラブルを招くリスクもありますので、弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのが賢明です。

今回は弊社でサポートさせていただくケースを例に、「『家族信託』を開始するまでの流れは?」というテーマでお話をさせていただきます。

※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?をご覧ください。

【ステップ①】初回面談

まずは、お客様と弊社専門家との間で面談を行います。この面談では、原則として委託者(財産を託す方)となる方と受託者(財産を管理する方)となる方両名にご同席いただきます。

可能であれば、家族全員が参加するのが望ましいでしょう。家族構成、所有財産、今後のライフプランなどについてなど、十分に時間を取ってじっくりとヒアリングを行います。そもそも家族信託を選択すべきかどうか、誰のためにどの財産を信託すべきか、他の家族へどのような影響があるかなど、様々な角度からご家族の課題を検討します。

面談の結果、ご相談者が家族信託を希望していても実行を見送るケースもあります。家族信託ではなく、遺言や任意後見契約などの他制度を提案することもあります。

【ステップ②】弊社との業務委任契約

次に、お客様と弊社との間で業務委任契約を締結させていただきます。面談の結果、家族信託の利用を决定した場合、弊社では、委託者となる方と受託者となる方からご契約をいただき、業務を開始しています。

【ステップ③】信託契約書案の作成

次に、信託契約書案の作成です。面談の内容や収集した資料を元に、弊社でお客様のご要望を反映したオーダーメイドの信託契約書案を作成します。

信託契約書には、信託目的・信託期間・信託財産の管理方法・帰属権利者など、どの信託契約書にも欠かせない要素がありますが、ひな型にそのまま落とし込んだような契約書ですと、大きな落とし穴に陥る危険があります。

なぜなら、ご家族ごとに抱える課題や悩みは異なるからです。特に注意しなければならないのは、「信託の開始後」と「信託の終わり」です。家族信託は、信託契約を締結してからが始まりですが、信託の開始を急ぐあまり、信託開始後の状況の変化や信託終了後の事態をあまり考えずに開始するケースが散見されます。

先々まで想定した信託契約書の作成は、弊社でとても重要視しているポイントです。

【ステップ④】家族会議の開催

弊社では、原則として信託契約書案の段階で、一度家族会議の開催をおすすめしています。その際に、弊社専門家も同席をさせていただくようお願いしています。この家族会議には、委託者や受託者のように、信託契約の当事者になる方だけでなく、将来委託者が亡くなった際に相続人になる方などにも参加していただきます。

その趣旨は、家族それぞれの想いを皆で共有し、その想いをすり合わせることにあります。家族信託が将来の紛争の種にならぬよう、ご家族の意見をそれぞれ汲み取りながら、家族信託ついて丁寧にご説明します。家族で話し合った結果、家族信託などの生前対策を行わないことももちろんありますが、事前に家族の財産管理や相続について話し合っておくことは、それだけでも非常に意味があることです。

【ステップ⑤】金融機関との打ち合わせ

契約内容が定まり次第、金融機関との調整を行います。家族信託を利用する際には、信託する金銭を、専用の信託口口座で管理することが実務上推奨されています。受託者には、自身の金銭と信託された金銭を分けて管理する義務(分別管理義務)が課されていますので、それをより徹底することが目的の1つです。

この信託口口座を扱っている金融機関は、全国でもまだ限られているのが現状ですので、家族信託を検討する際には近くに対応する金融機関があるかどうかを事前に調査することが大事です。信託口口座を開設する場合には、金融機関による信託契約書案等の審査を要しますので、弊社ではその手配をお客様の代わりに行っています。

【ステップ⑥】公証役場との打ち合わせ

ステップ⑤の前に行うこともありますが、公証役場との契約内容の調整を行います。そもそも家族信託の契約書は、必ずしも公正証書で作成する必要はありません。

しかし、前述の信託口口座を金融機関で開設する条件として、公正証書によることが求められているケースが多く、また将来の紛争予防の意味でも、公正証書で作成することをおすすめしています。

【ステップ⑦】信託契約の締結

ステップ⑥までを終えて、信託契約締結を迎えます。収益物件の信託の場合は、事前にテナントや管理会社に対して、信託による所有者変更の通知を行うケースもあります。

公証役場では、事前に予約した日に委託者と受託者が揃い、公証人の面前で信託契約を締結します。締結した契約書は、公正証書としてその場で受け取ることができます。原則として契約と同時に家族信託の効力が発生しますので、早速次のステップに移っていきます。

【ステップ⑧】信託口口座の開設

信託契約を締結すると、信託した金銭を信託口口座で管理することになります。事前にステップ⑤で金融機関の審査を終えていますので、締結した信託契約書を提出して、信託口口座を開設します。この信託口口座は、一般的に「委託者〇〇受託者〇〇信託口」という名義で開設され、受託者が受益者より先に死亡しても、受託者の相続人ではなく次の受託者に承継される、受託者個人が破産しても信託口口座の金銭が保全されるなど、信託財産を守るための機能を有しています。

【ステップ⑨】信託金銭の払込・信託登記

信託口口座を開設した後は、信託契約書で定めた金銭を受託者の信託口口座に振込みます。また、信託不動産を受託者名義とする信託登記手続を行います。信託登記は専門的な手続きとなりますが、司法書士が代理人として手続きするのが一般的です。

【ステップ⑩】信託の開始

ステップ⑨までを終えて、晴れて家族信託の本格的な開始です。受託者は信託目的の範囲内で、信託された金銭や不動産を管理し、必要に応じて信託財産を処分する権限があります。これによる利益は全て受益者に帰属します。

家族信託はこれからが始まりですので、家族の事情や財産状況の変化にも対応できるよう、弊社で適切なメンテナンスのサポートを行うこともあります。
例えば、受託者が適切な管理を継続しているか監督するため、弊社が信託監督人に就任するケース、必要に応じて信託の変更をサポートするケースなどがあります。

【最後に】

今回は、家族信託を開始するまでの一般的な流れについてご説明をさせていただきました。ご家族の事情は様々ですので、上記と異なる流れとなるケースもあります。

今回のコラムが、皆様が家族信託を検討・利用する際の一助となれば幸いです。
 
元木 翼 もときつばさ
チェスナット司法書士法人・行政書士事務所 代表
千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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