2020.2.26
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相続

不動産相続の手続き・節税方法・必要書類について完全解説

(画像=Vitalii Vodolazskyi/Shutterstock.com)
(画像=Vitalii Vodolazskyi/Shutterstock.com)

当記事をご覧になっている方は、不動産の相続が見込まれる方、もしくは相続が発生した直後の方ではないかと思います。現金であれば遺産分割や相続もシンプルに進めることができますが、不動産の場合はそう簡単にもいきません。
しかも日本では相続財産の大半が不動産であり、遺産相続=不動産の相続というイメージをお持ちの方は多いと思います。

専門家でない限り、人生で何度も相続を経験する人は少ないので、どうしても相続というと「難しそう」「手続きや立ち振る舞いを間違えると大損しそう」といったように、不安を抱く方が多くなってしまうのではないでしょうか。

そこで当記事では、不動産の相続について最低限知っておくことで不利益を回避することができる知識として、手続きの流れや時系列でのやることリスト、必要書類などについて順次解説していきます。
一見すると複雑そうに見える不動産の相続ですが、この記事一本で概要が理解できるように構成していますので、どうぞ最後までお付き合いください。

<目次>
1.不動産相続の必要知識は3つ
1-1.相続税など税金の知識
1-2.必要書類の知識
1-3.手続きの流れについての知識
2.不動産相続の手続きの流れ
2-1.死亡届の提出
2-2.遺言書の確認
2-3.戸籍謄本の取得
2-4.遺産分割協議書の作成

1.不動産相続の必要知識は3つ

(画像=sommart sombutwanitkul/Shutterstock.com)

不動産の相続を円滑に進めるために知っておくべきことは、3つに集約されます。その3つとは、「税金」「必要書類」「手続きの流れ」です。この章ではこの3つについてわかりやすく簡単に解説します。

1-1.相続税など税金の知識

相続財産が一定以上の規模になると、相続税が発生します。相続税には基礎控除という枠が設定されており、相続財産が以下の金額以下であれば申告と納税は不要です。

3,000万円 + 法定相続人の数 × 600万円 = 基礎控除額

例えば妻と子2人という家族で夫が亡くなった場合は、3,000万円と600万円×3人分の1,800万円を足した4,800万円が基礎控除額となります。夫が遺した財産が4,800万円以下であれば、相続税とは無縁であると考えて問題ありません。

不動産を相続する場合は、その不動産が相続税の観点からどれだけの価値を持っているかという評価をする必要があります。上記の例ではその評価額が4,800万円に満たない場合も、同様に相続税は発生しません。

1-2.必要書類の知識

相続を完了させるまでには、さまざまな必要書類があります。現金の相続で必要になる書類に加えて、不動産を相続する場合は相続対象になっている不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書などが必要になりますが、これらも含めて必要書類については後で詳しく解説します。

1-3.手続きの流れについての知識

不動産の有無に関係なく相続には大まかな流れがあります。被相続人(亡くなった人、以後故人とも表現します)が亡くなった時点で相続が始まり、遺言書の確認や遺産分割協議を経て、相続税が発生する場合は申告と納税をして、最後に相続登記をして一連の手続き完了となります。

相続税の申告には10ヶ月という期限があるため、これら一連の手続きを遅滞なく進めていく必要があります。10ヶ月というのは長いようで短いと感じると人が大半なので、以下の解説で概要をしっかりと理解して行動しましょう。

2.不動産相続の手続きの流れ

(画像=AVN Photo Lab/Shutterstock.com)
被相続人が亡くなった(つまり相続が発生した)場合、まずすべきことは4つです。被相続人が亡くなったら、以下の4つを上から順に行います。

2-1.死亡届の提出

被相続人が亡くなってから7日間以内に、役所に死亡届を提出します。東京の特別区や政令指定都市であれば各区役所、それ以外の場合は市町村の窓口に提出します。これにより、公的に被相続人が亡くなったことが認知されます。

2-2.遺言書の確認

故人が遺言書を作成しているかどうか、その有無を確認します。代理人に託している場合はスムーズに見つかりますが、自分で作成して保管している場合もあるので、故人の持ち物などを探して遺言書がないかを確認します。

2020年7月10日以降は法改正によって自筆証書遺言の保管制度が開始されるため、故人の遺言書が法務局に保管されている可能性もあります。

(関連記事:遺言書があったらどうなる??その効力と扱い時の注意とは

2-3.戸籍謄本の取得

故人の出生から死亡に至る経緯を証明するために、戸籍謄本を取得します。これも相続手続きに必要な書類なので、できるだけ早く取得しておくことをおすすめします。

2-4.遺産分割協議書の作成

法定相続人が複数いる場合は、「遺産分割協議書」が必要になります。相続人同士で話し合い、故人の遺産を誰がどのように相続するのかを話し合って取り決め、その内容を協議書にまとめます。
これができると相続はスムーズに進みますが、「争族」とも言われる遺産相続トラブルの大半は、この遺産分割協議の際に発生しています。

(関連記事:遺産分割が終わらないとどのようなデメリットが?

3.相続税の計算・節税方法

(画像=enciktepstudio/Shutterstock.com)

日本の相続税は税率が高いため「金持ちは三代続かない」と言われることもあります。さまざまな節税のスキームがありますが、それを理解するために相続税の概要から節税の基本的な考え方を解説します。

3-1.税額の計算方法

相続税の税率は累進税率が採用されており、相続財産の規模が大きくなるほど税率が高くなります。以下が相続税の税率一覧です。最高税率は55%となっており、例えば6億円を超える相続では半分以上が税金になってしまいます。

課税価格 税率 控除額
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
 

課税価格がいくらなのかによって税率が導き出されます。課税価格に税率を掛けた金額から控除額を差し引いたものが「相続税額」になります。

例えば課税価格が4,000万円なのであれば20%が適用されるので、4,000万円×20%=800万円。そこから控除額である200万円を差し引くと、相続税額は600万円になります。

3-2.納税時期、納税方法

相続税には、納税時期という期限があります。相続の発生から10ヶ月以内と定められており、それまでに遺産分割協議をまとめて申告し、納税を済ませる必要があります。

相続税申告は納付書を自分で記入して提出、税金の納付をする仕組みになっているので、申告書は税務署へ、納付書は金融機関に提出します。

これらの手続きはどちらも10ヶ月以内に済ませなければなりませんが、順番についてはどちらが先でも問題ありません

(関連記事:10ヵ月以内に相続税を現金納付できない場合の対処法は?

3-3.相続税を節税する基本的な考え方

相続税は税率が高いことから、資産家など承継したい財産の額が大きい人にとっては死活問題になることがあります。
そのためさまざまな節税スキームが考案されていますが、相続税における節税の基本はおおむね、評価減と特例の活用に集約されます。

評価減とは、相続財産の評価を可能な限り低くすることで、相続税率の軽減だけでなく基礎控除内に収めることができれば相続税の納税義務そのものをなくすこともできます。
不動産は現金資産よりも流動性が低いため、その分評価額が低くなる仕組みになっており、さらにそれが賃貸用の不動産だと借家人の権利分も評価減につなげることができます。

もうひとつ、不動産を相続する場合には特例もしっかり活用したいところです。有名なのは「小規模宅地等の特例」です。
要件を満たせば、居住用の宅地の場合で、相続した土地のうち330平方メートルまで評価額を80%も引き下げることができます。
土地と建物を相続したとしても適用されるのは土地部分だけですが、それでも要件を満たしている人にとっては節税効果が高く、不動産を相続するのであれば一度は確認をするべき制度です。

相続税の申告では税理士に依頼することになる方が大半だと思いますが、相談の際にはこうした評価減や特例の活用といった節税がどこまで有効なのかという点をしっかりチェックしてください。

4.不動産相続に必要な書類は9種類

(画像=eakasarn/Shutterstock.com)

ここでは、不動産を相続する際に必要となる書類を9項目に分けて解説します。相続手続きで必要になるものばかりなので、こちらをチェックリストとしてご活用いただき、遅滞なく書類を揃えていきましょう。

  必要書類 概要
相続全体で必要になる書類 ①相続人全員の戸籍謄本 被相続人が亡くなった日以降に取得したもの
②相続人全員の印鑑証明書 遺産分割協議書に押印する実印の印鑑証明
③被相続人の戸籍謄本 「死亡」の記載があるもの
④被相続人の住民票の除票 被相続人の戸籍の附票でも可
⑤遺言書 あれば。自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合、家庭裁判所の検認手続きが必要
⑥遺産分割協議書 相続人が1人だけの場合や法定相続分に従う場合は不要
また、遺言書がありそのとおりに分割する場合は不要
遺産分割協議が難航した場合・家庭裁判所が調停や審判を行った場合は、裁判所の調停調書もしくは審判所謄本が必要
不動産を相続する場合に必要になる書類 ⑦不動産の登記事項証明書(登記簿謄本) 以前の名称は登記簿謄本。法務局で取得
⑧不動産を相続する相続人の住民票 相続登記に必要
⑨不動産の固定資産評価証明書 相続登記をする際の登録免許税を計算するために必要。相続対象不動産の所在する役所で取得

4-1.相続人全員の戸籍謄本

法定相続人であることを証明するために、相続人全員の戸籍謄本が必要になります。被相続人が亡くなった日以降に取得したものでないと有効ではないので、この点だけ注意が必要です。以前にたまたま取得したものがあったとしても、それは相続の手続きには使えません。

4-2.相続人全員の印鑑証明書

相続人全員の戸籍謄本に加えて、印鑑証明書も必要になります。この印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印する実印が本人が登録済みのものであることを証明するために用いられます。

4-3.被相続人の戸籍謄本

被相続人が亡くなったことを証明するために、「死亡」の記載がある戸籍謄本を取得します。被相続人が亡くなった時に置いていた本籍地の役所で取得可能です。

4-4.被相続人の住民票の除票

除票とは、亡くなった人の住民票という意味です。被相続人がどこに住んでいたのかを証明するために取得します。被相続人が亡くなった時点で住民票を置いていたところの役所で取得可能です。

なお、被相続人の住所を証明する書類として戸籍の附票も使用できます。こちらは居住地ではなく本籍地の役所で取得します。

4-5.遺言書

故人が遺言書を作成している場合は、こちらも手続きに必要になります。遺言書には3つの種類があり、それぞれ公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言といいます。

公正証書による遺言書はすでに法的な効力があるのでそのまま使用できます。一方、自筆証書遺言と秘密証書遺言については家庭裁判所の検認という手続きが必要になります。(2020年7月10日以降、法務局で保管される自筆証書遺言については、検認の手続きは不要です)

なお、自筆証書遺言とは被相続人が生前に紙とペンで自書した遺言書(2019年1月13日より方式が緩和され、相続財産の目録については自書しなくてもよいことになりました)のことで、秘密証書遺言は公正証書遺言と同じく公証役場で作成する遺言書のことです。
生前は内容を知られたくないという場合に用いる遺言書で、公証人も遺言の中身を知ることはありません。そのため、公証役場で作成された遺言書であっても家庭裁判所の検認が必要になるのです。

(関連記事:遺言書があったらどうなる??その効力と扱い時の注意とは

4-6.遺産分割協議書

遺言書の通りに相続する場合や、法定相続分に従って機械的に遺産分割を行う場合は不要ですが、それ以外に相続人同士で話し合った結果を反映させたい場合は、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議が難航し、家庭裁判所が調停や審判を行った場合は、裁判所の調停調書(調停の場合)、もしくは審判所謄本(審判の場合)が必要になります。

(関連記事:遺産分割が終わらないとどのようなデメリットが?

4-7.不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

前項までは相続全体で必要になる書類ですが、ここからの3点は不動産を相続する場合に限って必要になる書類です。

登記事項証明書とは、以前は登記簿謄本と呼ばれていた書類です。どの不動産を相続するのかという特定に用いるため、とても重要な書類です。登記事項証明書は、法務局で取得します。

4-8.不動産を相続する相続人の住民票

相続人の中で不動産を相続する人については、その人の住民票が必要です。理由は相続登記をする際に新所有者の住民票が必要になるからです。

4-9.不動産の固定資産評価証明書

不動産の登記には、登録免許税という費用が発生します。相続登記でも同様で、相続登記をする際の登録免許税を計算するために固定資産評価証明書が用いられます。

こちらは登記に関連する書類なので法務局だと思われがちですが、相続の対象となる不動産がある市町村の役所で取得するので注意してください。

5.不動産の相続でありがちな疑問と答え

(画像=And-One/Shutterstock.com)

最後に、不動産相続においてありがちな疑問や素朴な疑問について、その答えを交えて解説をしたいと思います。

5-1.相続でも不動産取得税はかかるのか?

不動産を取得すると、不動産取得税という税金が発生します。これは「生きている人からの不動産取得」にかかる税金であるため、亡くなった人からの不動産取得である相続には適用されません。つまり、相続では不動産取得税は発生しません。

ただし先ほども述べたように、「生きている人からの不動産取得」だと不動産取得税は発生します。例えば被相続人になる人から生前贈与によって不動産を取得したとしたら、こちらは課税対象です。なお、税率は原則として固定資産税評価額に対して3%です。

(関連記事:タダほど高いものはない?不動産の贈与を受けたときにかかる3つの税金

5-2.相続登記しなければ逃げ得?

上記ですでに述べたとおり「相続税の申告は相続の発生から10ヶ月以内」と厳格に定められているのを筆頭に、相続に関する手続きには期限が定められているものがあります。
それゆえに相続登記についても期限があると思われがちですが、実は相続登記には具体的な期限の定めがありません。
登記は登録免許税や司法書士に依頼した場合の報酬などお金がかかるため、期限がないのであればそのうちにという具合に放置したままになっている事例は意外に多くあります。

それでは、ずっと相続登記をせずに放置していれば逃げ得になるのかというと、そうではないと考えておいたほうが良いでしょう。
登記をしないと第三者から権利侵害などがあった時に自分の権利を主張しにくくなりますし、登記によって所有権を確定しなければ売却もできません。

さらに、相続登記をせずに放置したまま次の世代、また次の世代へと相続されていくと、所有権が未確定のまま相続人だけが増えることになります。そうなると遺産分割も複雑になり、トラブルの原因にもなります。

期限の定めがないからといって相続登記をせずにいると、逃げ得どころか不利益を被る可能性が高いと言えます。

(関連記事:不動産を相続したら登記をするべき3つの理由

5-3.不動産の遺産分割、兄弟間ではトラブルになりやすい?

現金や有価証券などの財産であれば分割しやすいのですが、不動産は簡単に分割することができず、しかも兄弟間だとどちらかがその家に住んでいる場合などがあるため、トラブルになりやすいと言われています。
共有をせずに分割する方法には、「現物分割」と「代償分割」、「換価分割」という3つがあります。

現物分割とは、相続財産を現物のまま分配する方法です。
例えば相続財産の中に不動産が1つしかなく、不動産を相続できる人が1人しかいない場合に、兄弟のうち1人が不動産を相続し、残りの兄弟は代わりに現金や有価証券などを相続するというような形です。
長男や長女が実家を相続し、それ以外の財産を残りの兄弟で分割するという解決事例が多く見られます。

代償分割も、不動産の相続によく用いられる手法です。
例えば、相続財産が実家とその土地くらいしかなく、分割も難しい場合、兄弟のうち1人がその不動産を相続して残りの兄弟には、法定相続分を超える財産を取得する代償として、自らそれに見合った現金を渡すという形です。
不動産を相続した人には現金の持ち出しが発生しますが、不動産を無理に分割して価値を低くしてしまうのを避ける意味では有効な解決法です。

(関連記事:「代償分割」のメリット・注意点

換価分割とは、相続財産を換金したうえでその金銭を分配する方法です。例えば、上記と同じような状況において、実家と土地を売却してその代金を兄弟で分けるという形です。代償分割と比べると、相続財産を手に入れる側の人が現金を用意する必要がないという点で異なります。

6.まとめ

ただでさえ複雑に感じる相続について、しかも相続財産の中に不動産が含まれていることで頭を悩ませている方に向けて、最低限知っておくべき知識を可能な限りシンプル化して解説してきました。
ここで解説した情報を網羅しておけば、税理士や司法書士に依頼する際にもやり取りがスムーズになるため、決して損にはならないと思います。

とかく敷居が高いと感じる方が多い不動産の相続について、その敷居を少しでも下げることができれば幸いです。

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