2020.4.6
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相続

後継者が引き続き農業を営むための相続税の特例

(画像=igorstevanovic/Shutterstock.com)
(画像=igorstevanovic/Shutterstock.com)
少子高齢化等の影響によって、事業を承継する後継者が不足しているのは多くの業界に共通している問題で、農業にとっても例外ではありません。

また承継の際の税負担が大きくなる場合もあり、後継者となる親族が事業承継に二の足を踏むケースも少なくありません。

このような事業承継の際に、後継者の税負担を軽減する様々な特例等がありますが、今回は農地を相続した場合に相続税の納税が猶予される特例についてお伝えします。

農業後継者が抱える問題

この特例は相続によって農地が細分化されることを防止するために、1975年に創設された制度です。農地周辺の宅地化・市街化が進んでいる場合には、将来宅地に転用して売却をすれば高い収益が得られるという農地の時価の高騰や、市街地農地の「宅地並み課税」等の影響によって、相続時に多額の相続税が課税された場合には農地の全部又は一部を売却して納税せざるを得ないという状況も考えられます。後継者にとっては税負担と農業継続の危機という大きな2つの問題を抱えることになります。

このような問題を打開するために制度が創設され、農地を相続し引き続き農業を営む場合には、農地の相続税評価額のうち国税庁が定めた「農業投資価格」を超える額については、相続税の納税が猶予されます。宅地化した場合に得られる収益部分についての相続税納税が猶予されるとも言え、この制度が「農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例」となります。

特例の活用によって農業が継続できる

後継者は税負担を軽減でき、かつ相続した農地を守り農業を継続できますが、この特例の適用を受けるためには被相続人・相続人・相続する農地それぞれに次のような要件があります。

・被相続人の要件:次のいずれかに該当する場合

1.死亡の日まで農業を営んでいた

2.農地等の生前一括贈与をして、死亡の日まで受贈者(相続人)が「贈与税の納税猶予」又は「納期限の延長の特例」の適用を受けていた

3.死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため貸借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした

4.死亡の日まで特定貸付け等を行っていた

・相続人の要件:被相続人の相続人で、次のいずれかに該当する場合

1.相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行う

2.農地等を生前に一括贈与され贈与税の納税猶予の特例を受けていた

3.農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした

4.相続税の申告期限までに特定貸付け等を行った

・農地等の要件

1. 相続税の申告期限までに遺産分割された次の農地等
イ被相続人が農業の用に供していた農地等
ロ被相続人が特定貸付け等を行っていた農地又は採草放牧地
ハ被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等

2.被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの

3.相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの

以上のような要件を満たす必要がありますが、特に農地等については詳細な要件が定められているため、該当農地が特例を受けることができるかどうか事前に確認をしておく必要があります。

特例を活用する際の注意点

特例を活用するには、相続税の申告期限までに申告書に所定の事項を記載するとともに、農地等納税猶予税額及び利子税の額に見合う担保を提供する必要があります。

また相続税の申告期限から3年目ごとに、引き続きこの特例の適用を受けるための「継続届出書」の提出が必要となる他、相続した農地の売却・農業の廃業・継続届出書を提出しない等、一定の要件に該当した場合には猶予されていた相続税を納付しなければなりません。

なお納税が猶予された相続税については、次の3つに該当した場合には納税が免除されます。
1.農業相続人の死亡

2.相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過した場合(三大都市圏特定市区の生産緑地がある場合及び市街化区域外の農地等を除く)

3.農地等を農業後継者に生前一括贈与した場合(受贈者は「贈与税の納税猶予の特例」が受けられる)

このように特例を活用すれば相続税の納税が猶予・免除されますが、あくまでも農業を継続している場合に適用される制度ですので、農地を相続する場合には様々な要件を確認した上で活用するかを検討する必要があります。
 

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