2020.3.12
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相続のプロに聞く

【実例】認知症の姉の資産を管理したい/ホームスター(北海道旭川市)

高齢者の不動産や預貯金の管理をどうするか、悩む人が増えています。今回は家族信託を選択し、マンション処分など、姉の資産管理を任されるようになった妹の事例を取り上げます。

高齢の姉の資産をどのように管理すればよいか?

Mさん(77歳女性)は、ひとり暮らしをしている姉のHさん(90歳)の今後について心配になり、相談に来られました。Hさんは亡くなった夫名義でマンションを保有して一人で住んでいますが、認知症の兆候がみられるため、いつか一人暮らしも難しくなるかもしれません。そうなるとマンションなど姉の資産の管理はどうすればいいのでしょうか。

そこでMさんは北海道旭川市の「不動産相続の相談窓口」を訪れました。相談に当たったのは不動産会社、ホームスターの植西晃典さんです。

Hさんと亡くなった夫の間には子どもがいません。また、Hさんの夫にはたくさんのきょうだいがいますが、みなさん高齢で、すでに亡くなった方もいます。一人暮らしが難しくなるようなら、将来はMさん夫婦がHさんの面倒をみる予定ですが、もし今のままHさんが亡くなると、Hさんの夫名義のマンションはHさんの夫のきょうだいたちとMさんとが相続する権利をもつことになり、関係が非常に複雑になってしまいます。

Mさんは、「マンションをどうしたらいいのか」、「家族信託がいいのではないか」、「もし自分(Mさん)が先に亡くなることがあればどうしたらいいか」、「できるだけ早く、スムーズな方法を選択したい」など、植西さんに状況を説明し、アドバイスを求めました。

【問題のポイント】
1.認知症が進み始めた姉のマンション売却(資産管理)をどうするか。
2.家族信託は選択としてどうか。
3. 相談者が先に亡くなる可能性がある場合でも家族信託は妥当か。
4. 姉の認知症が進行する心配もあり、できるだけ早く手続きを進めたい。

家族信託を活用して問題を解決

 
家族信託については、Hさんも事前にリサーチをしていて、ひとつの解決法として提示されていました。ですから、植西さんはまず家族信託についてメリットやデメリットの説明をしました。

もしMさんが受託者となり、家族信託契約を結ぶと、Hさんの認知症がさらに進んだ場合にMさんが銀行から預貯金の引き出しもできますし、不動産の処分も可能になります。

Mさんは家族信託を結ぶ方向で納得されたので、植西さんはHさんにもお会いして、意思確認をしました。Hさんは初期の認知症とはいえ、しっかりとした応をされていました。自分の名前がわからない、自分の家を売却する可能性について認識がはっきりしない、といった状況では家族信託を結ぶのは難しいのですが、Hさんは家族信託の内容を確認でき、許可をいただけたので大丈夫でした。

家族信託の受託者は基本的には「本人の面倒をみることができる人」が対象になります。今回は妹であるMさんが受託者ですが、Mさん自身も高齢のため、対応が難しくなることも考えられます。その場合は30代の娘さんが再受託者となり、預貯金の出し入れや不動産の売却ができる契約にしました。
 

16人の相続人と相続登記

実際の流れとしては、マンションの名義がHさんの亡くなった夫のままでしたので家族信託を結ぶ前に、司法書士の先生と連携し、Hさんの名義へ変更するための手続きを開始しました。名義を変更するには、Hさんの他、法定相続人である夫のきょうだい全員(なくなっている場合は、その子や孫などの代襲相続人)から同意を得る必要があります。

夫のきょうだいは北海道内外に10人ほど散らばっていたので、司法書士の先生が一人ひとり電話で確認を取り、亡くなった方に関しては子ども、子どもが亡くなっていれば孫というふうに相続人を探していきました。最終的に合計16人に電話や郵送で確認を取り、全員から確認を得ることができました。とはいえ血縁関係が薄く、亡くなったご本人と話をしたこともない方も含まれていたため、説明や相続登記の手続きに時間を要し、結果として約半年ほどかかりました。

マンションの名義がHさんに変更されてから、無事家族信託の手続きを実施することができました。現在、HさんはMさんご夫婦の家に同居しています。マンションはまだ売却していませんが、MさんがHさんの資産管理を任せられており、互いに安心できる環境で暮らしているとのことです。

問題解決までの流れ

・相談者が相続勉強会に参加
・相談内容、資産概要について個別の相談
・マンションの名義変更について、相続関係の権利がある人を含めた相談
・司法書士を通じ、相続関係がある人の相続登記の手続き
・家族信託の契約締結
・相続から家族信託の契約までに要した時間は6ヶ月
・植西さんのコンサルティング料は30万円

何でも頼れる町医者のような存在をめざして

 
植西さんはMさんからの相続相談について、このように振り返っています。

「今回は不動産そのものの相談というより、ご自身が終活するうえで出てきた悩みを『どこに相談していいのかわからない』というのがきっかけでもありました。町医者のように、とりあえず来てもらい、何が問題かを探し解消する手伝いができることがとてもうれしいと感じます。何でも相談できる、信頼できると思ってもらえることが、今後の関係構築にも役立っていくと思います」

実際に相続のコンサルティング業務を手がける前から、相続に関する相談を頻繁に受けていたという植西さん。相続に関する悩みがあまりにも多く、多岐に渡ることから、勉強を始めました。現在、相続についての相談は年間に約300件に及びます。うち8割は不動産関連ですが、なかには不動産とまったく関係のない内容もあり、弁護士、弁理士、司法書士を紹介して解決を図ることもあります。

旭川市は札幌市から約140キロ、北海道第2の都市ですが、地方ならではの高齢化の問題も数多く見受けられます。「親の家を子どもがそのまま引き継ぐというよりは、子どもが遠方に住んでいて、親の持ち家を売却する、古い家を解体するといったケースも多く、子どもが複数いる場合など相続の問題に発展することもあります」と植西さんは説明します。

単に不動産物件の売買を扱うのではなく、状況を丁寧にヒアリングして、本人や周囲を含めた思いなども把握したうえで、処方箋として選択肢を示していく。このようなビジネスモデルを追求しています。「問題解決型不動産コンサルティングとして、2022年10月末までに旭川市内で顧客満足度ナンバーワンになる」という経営のビジョンを掲げて、植西さんは日々、相談者の問題解決に取り組んでいます。

【今回相談に乗っていただいた担当者】
<植西晃典(うえにし・あきのり)さんプロフィール>

ホームスター代表取締役、リコプラス合同会社代表社員

北海道旭川市出身。高校卒業後、外食産業に従事。2004年不動産業界に転職。札幌、旭川にて複数の不動産会社にて経験を積み、11年ホームスターを設立。相続コンサルティング・資産有効活用、賃貸経営に関するアドバイスなど不動産オーナーや個人を対象にした総合不動産コンサルティングを手がける。NPO法人相続アドバイザー協議会認定相続アドバイザー、相続診断士、CPM(米国不動産経営管理士)、2級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、損害保険取扱の資格を有する


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