2020.3.18
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.11】安全な家族信託を続けるための3つの方法

(画像=asife/Shutterstock.com)
(画像=asife/Shutterstock.com)
認知症対策の手段として、近年「家族信託」を利用される方が急増しています。マスコミなどで取り上げられることも多くなっており、弊社での相談件数や取り扱い件数も飛躍的に増えています。一度は聞いたことがあるという方も多いことでしょう。

家族信託とは、財産を所有する「委託者」が、信頼する「受託者」に財産の管理権限を移し、そこから発生する利益を「受益者」に給付する仕組みです。家族信託のメリットの1つとして、裁判所などの監督下に置かれること無く、家族で柔軟な財産管理を実現できる点が挙げられています。

財産管理の制度としては、他に家庭裁判所が運用する成年後見制度(=認知症などにより判断能力が不十分になった人のために,家庭裁判所が支援者を選び,本人を保護する制度)がありますが、不動産の売買などに家庭裁判所の許可が必要となったり、定期的に家庭裁判所への報告が必要となったり、裁判所による監督機能が家族にとって負担となるとも言えます。この点、家族信託は文字どおり「家族」を「信」じて「託」す制度ですので、信託目的の範囲内であれば、原則として第三者に監督されることなく、自由に財産の管理・処分ができるのです。

※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?をご覧ください。

「監督機能がない」というリスク

財産を管理する受託者が、第三者の監督を受けることなく財産管理を行うことができるというのは、家族信託のメリットである一方でデメリットにもなり得ます。監督を受けることがないため、受託者が自由に財産管理をできることになりますが、受託者による使い込みなどを防止することが難しくなるからです。

もちろん、受益者から受託者に対して様々な牽制や要求をすることにより監督をすることは可能ですが、家族信託における受益者は高齢者であることがほとんどですので、実際には難しいケースが多いといえるでしょう。

したがって、個々の事情に応じて、第三者による監督機能を設けておくことが、安全な家族信託を続けるための重要なポイントになるといえます。

そこで、今回は、実務上利用される「安全な家族信託を続けるための3つの方法」を紹介したいと思います。家族信託を検討されている方は是非ご一読下さい。

方法1 「受益者代理人」の活用

①受益者代理人とは?
本来、受託者の仕事を監視・監督するのは受益者の役割とされています。受益者は受託者に対して信託事務の報告を求めたり、また、受託者の一定の行為を取り消したりすることができます。受託者との協議によって、必要に応じて信託の内容を変更することもあります。しかし、家族信託の場合、多くの受益者は高齢で、受託者の仕事を監督するには難しいケースがほとんどです。

そこで、「受益者代理人」の活用が考えられます。受益者代理人とは、文字どおり「受益者」の「代理人」です。受益者代理人を設置しておくことによって、たとえ受益者が認知症などで判断能力を失ってしまっても。受益者の代わりに受益者代理人が受益者の全ての権限を行使することができます。実務上は、受託者以外の親族や弁護士・司法書士などの専門家を受益者代理人として設定することが多いです。

②注意点
原則として、受益者代理人を設置する場合には、信託契約書にその定めがあることが必要であるため、家族信託の開始と同時に検討する必要があります。
また、受益者代理人が就任することにより、受益者が法律上有する多くの権利を自分では行使できなくなりますので注意が必要です。

具体的には、信託契約の内容を変更することや、受託者に金銭の給付を求めることなども、原則として受益者代理人が行うことになります。実務上は、認知症等で受益者の判断能力が低下した後など、一定の条件の下、受益者代理人が就任するように信託契約で定めておくことも可能です。

その他、受益者代理人を弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合は、一定の報酬が設定されるケースが一般的です。

方法2 「信託監督人」の活用

①信託監督人とは?
信託監督人とは、主として受託者を監督することにより、信託目的に沿った信託事務が行われているかを確認する人をいいます。よくご質問を受けるのが、前述の受益者代理人と信託監督人との違いです。一般的に受益者代理人は、受益者に代わりすべての権限を有しています。

しかし、信託監督人は受託者を監督する権限のみを有していますので、権限としては受益者代理人に比べて、やや狭くなります。よって、受益者代理人と信託監督人のどちらを設置するのかは、事案に応じて慎重に検討することになります。

②信託監督人の注意点
信託監督人は、前述のとおり受託者の監督に関する権限を有しているのみですので、将来受益者が認知症などで判断能力を失ってしまったような場合において、受益者の保護を図れるのかどうかという点は十分に検討しておくべきです。

また、専門家に依頼した場合に報酬が発生する点は受益者代理人と同様ですが、受益者代理人と比べると比較的安く報酬が設定されるケースが多いようです。

方法3「専門家によるアフターサポート」の活用

①専門家によるアフターサポートとは?
お客様の中には、受託者を監視・監督してほしいのではなく、安全な家族信託を続けていけるよう、家族に寄り添ってサポートをしてほしいという方も多くいらっしゃいます。また、信託監督人や受益者代理人には法律上様々な義務や責任が伴うことになりますので、就任に躊躇する方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合、受益者代理人や信託監督人を利用するのではなく、信託を組成した専門家と別途「アフターサポート」契約を締結し、継続的に信託運営に関するアドバイスや手続のサポートなどを受ける方法が考えられます。
家族信託のスキームの中に入り、直接受託者を監督するわけではありませんが、家族信託という新しい仕組みを取り入れたご家族が、安心して家族信託を続けていけるようサポートすることはとても重要なことといえるでしょう。

費用の面からみても、一般的に受益者代理人や信託監督人の報酬よりも安くなることが多いので、今後はこの形態が増えていくことになるかもしれません。

②アフターサポートの注意点
家族信託のアフターサポートは、受益者代理人や信託監督人のように、信託法に基づく制度ではありません。したがって、サポートの内容は専門家ごとに異なりますので、内容や費用をしっかり確認しましょう。

最後に

今回ご紹介した3つの活用方法は、家族信託を利用したご家族が必ず取り入れなくはならないわけではありません。信頼できる家族だからこそ大切な財産を託す訳ですから、そこに第三者による監督がないと安心して信託を始めることができないのであれば、そもそも信託をはじめるべきではないかもしれません。

しかし、家族信託は信託契約を締結しておしまいというわけではなく、むしろ契約してからが始まりです。ご家族の置かれた環境や、今後ご家族に起こりうる出来事を慎重に検討しながら、将来ずっと安全に家族信託を続けられるような設計にすることが非常に重要なポイントなのです。ご家族の希望に合った家族信託を設計し、安心して続けられるような仕組みを作っていくことが大切です。

今後安全な家族信託を続けるために、本記事が皆様の一助になれば幸いです。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。

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