2020.3.20
/
相続のプロに聞く

【実例】空き家状態の実家を何とかしたい 「争族」解決策/吉永建設(兵庫県川西市)

今回ご紹介する相続事例の問題点とは

大阪府に住むAさん(60代・男性)は姉との関係に困り切っていました。数年前、独り暮らしだった父親が亡くなり、空き家となっている実家の相続について、「納得がいかない」と、弁護士を伴ってAさんの前に現れたからです。

同じ関西地域に住んでいながらも頻繁に行き来するような関係ではありませんでしたが、仲が悪いということもなく、まさか自分自身に「争族」の問題が降りかかってくるとは思ってもみませんでした。

父親が残した実家の土地と建物の法定相続人はAさんとAさんの姉の2人。遺言書はなかったので、法律に従えば2分の1ずつ分けることになります。

ですがAさんの姉は、母親が亡くなってから父親の介護を一人でやっていました。介護をした数年間、病院への送り迎えや食事の用意、日用品の購入はすべてAさんの姉が行っていました。「介護をしなかった弟と2分の1ずつの相続はおかしい」というのが、Aさんの姉の主張でした。

2分の1の相続で納得がいかないのであれば、どの割合での相続なら納得がいくのか、何度顔を合わせても話し合いは平行線をたどりました。

結果、Aさんの姉は弁護士を通じて話をするようになったというわけです。決着を付けるため、Aさんも弁護士を雇ったほうがいいのだろうかと考えましたが、弁護士費用は高く、できれば弁護士は付けずに解決したい。
とはいえ、このままずるずる話し合いだけで時間が過ぎると、固定資産税の支払いと、年に3回ほどの草刈り費用など維持費がかさんでいくだけです。

Aさんはどのようにして、この問題を解決したのでしょうか。

【問題のポイント】
・空き家になって数年間、このままだと固定資産税や維持費で出費がかさむ
・介護にかかった実費に加え長年の精神的、身体的な苦労を不動産相続時にどう配慮するか

「争族」から「相続」へ、解決の糸口をつかむ


Aさんは実家がある兵庫県川西市の「不動産相続の相談窓口」に相談しました。
ご対応いただいたのは、正門元気さんです。

正門さんは、地元で長年宅地開発を行い、住みやすい街作りに熱心に取り組む吉永建設の代表も務めています。
また2年程前から、川西市と空き家問題に関して連携協定を結んでいるNPO法人 兵庫空き家相談センターに所属し、川西市内で無料相談会やセミナーを開催するなど積極的に川西市の空き家問題解決に当たっています。

相談を受けた正門代表は、「ご実家の売却を最優先に考えましょう」とAさんに提案しました。Aさんは最初、驚きました。まずはどのような比率で財産分与するかを決めないと、相続した不動産の名義変更を行う相続登記ができないからです。相続登記しなければ、売却はできません。

これに対し正門社長は、「便宜上、Aさん2分の1、Aさんの姉2分の1で相続登記し、まずは売却してからお金をどうわけるか話し合いをすることを勧めます」と説明しました。
姉弟間で1年以上、感情的になって話し合いが進まないものを、今後何年かけようと決着が難しいのではないかと考えたからです。

空き家のまま置いておくと、周辺の住民さんに迷惑をかけ、周辺の不動産価値も下落させ、更に固定資産税・都市計画税など税金の支払いや維持費がかかるだけでなく、住宅資産価値が年々下がっている事実などを、地価データや人口推移などの情報を基に不動産のプロとして丁寧に説明したところ、Aさんの姉も冷静になり、すぐに売却することに同意しました。

一度冷静になってからは、それぞれこれまでにかかった費用を算出し、納得のいく形で売却金額を分けることができたそうです。Aさんも、長年一人で父親の介護をしてくれた姉の苦労を思い、配慮することができて心残りのない相続になったと話します。

実家の空き家問題で注意する点

「どのような場合でも、実家を子どもが相続したら、登記後すぐに売却した方がいいということではありません」と正門社長は強調します。

今回は相続人であるAさんとAさんの姉との関係や不動産の状況などを考えて、最適な策が「最優先で売ること」でした。気を付けなければいけないのが、相続人それぞれの背景や不動産の価値などを考慮せず、「すぐに対処しましょう!」と言ってくる業者だといいます。

たとえば、直近に相続登記した物件をピックアップし、かたっぱしからそれらの物件に「このエリアの家を購入したいという人がいるのでご連絡下さい」と書かれたチラシを投函する不動産業者がいます。
相続登記したものの、さて、どうしたらいいか考えている人の元に、自ら動くことなくタイミング良くやってきた申し出を、これ幸いと受け入れるのは当然の流れかもしれません。

ですが、「そういった不動産業者の中には、高く買い取りますといいながら、相場より大幅に安い価格で交渉する業者もあります。
後々後悔しないように、じっくりと考えてから信頼できる不動産会社に決めた方がいいと思います」(正門社長)。

「また最近は、不動産業者だけでなく、遺品整理サービス会社、解体工事会社による空き家への働きかけも積極的なので注意が必要です。
以前、相続の相談を受けたお客様のお話では、相続登記していようがしていなかろうが、取り敢えず売却する前に遺品整理をすまし、古い建物を解体して更地にしておいた方が不動産の価値が上がりますよと急かす業者もいるようです。

そもそも不動産が誰のものになるのかはっきりする前に遺品整理や解体工事をしたとしても、被相続人による遺言書がなく、相続人全員での遺産分割協議がまとまらないと、不動産を売却するまでの期間は遺品整理の費用や解体工事の費用はご自分で立て替える事になりますよね。
また更地にしてしまっては固定資産税などが上がってしまいます。不動産相続において遺品整理や解体工事も重要ですが、まずは遺産分割協議及び相続登記こそが最も重要だと思います。」

【今回の空き家問題解決までの流れと空き家売却時の注意点】
1.    不動産相続に関して詳しいプロに相談し、相続登記を行う。
2.    相続登記後、すぐに売却を勧め相場より安い価格を提示する不動産業者などに注意
3.    これまでの介護にかかった費用、固定資産税、維持費、遺品整理費用など経費を算出。それらを勘案して相続金額を決める(相続登記前に遺産配分が確定していれば3は必要なし)

かかわったすべてのお客様に笑顔と幸せを・・・企業理念を忘れず接客


吉永建設の事務所の周囲には緑が多く、ショッピングモールや幼稚園、保育園、公園など子育て世代が暮らしやすい環境が整っています。

川西市の街づくりの一翼を担っているのが創業37年、地元で長年、宅地開発などを行っている吉永建設です。

「妻の父、つまり義理の父が吉永建設の創業者で、現在の会長です。義理の父の誘いを受ける形で吉永建設に入社しました」(正門代表)。

現在36歳の正門代表は兵庫県伊丹市生まれ、高校から川西市に住みはじめ、「オールドニュータウン化していく川西市を若い子育て世代にも住みよい街にしたい。
宝塚市や西宮市、大阪など人気の街から移り住んでもらえる街にしたいという思いで転職しました」と話します。

大学は理工学部を卒業し、数学や物理コンサルタント、化学系IT企業と、不動産業界とはまったく異なる畑を歩み、次のステップへと考えていたところ「事業承継を考えていた義理の父である吉永会長より、吉永建設で働いてみないかと誘われ、石の上にも3年、3年やってみてモノにならなければ辞めさせてくださいと伝え、今年入社して8年目になります」(正門代表)。

数学や物理、化学と聞くと不動産業とはまったく畑違いに思えます。ですが、「不動産に関わる上で重要な問題であるアスベストや土壌汚染について、専門的な言葉が並べられても理解できる知識があります。

また数学や物理の知識も、建築士と話しをするときに役立ちますね。前職では、流体力学による車の空気抵抗などをシミュレーションする技術や化学薬品のITシステムなどを日本の企業にわかりやすく伝える技術セールスを行っていました。
専門的な用語などをかみ砕いてわかりやすく伝えるテクニック、これも、相続に関わる法律や不動産用語を説明するときに役立っています」と正門代表はいいます。

「自分自身がお客として初めて不動産を購入した苦い経験や祖父の相続の経験を活かし、お客様の利益や気持ちに寄り添って接客したい」と話す正門代表。
何か問題が起きたとき、同じ目線で相談に乗ってくれる不動産のプロは安心感があります。

【今回相談にのっていただいた担当者】
<正門 元気さんプロフィール>
兵庫県伊丹市生まれ、高校から川西市育ち。関西学院大学理工学部を卒業後、数学・物理コンサルタントや化学系IT企業で働く。

2013年、現会長の吉永氏に誘われる形で吉永建設に入社。宅地建物取引士、相続対策コンサルタント技能士、ハウジングライフプランナーの資格を取得し、吉永建設に入社する前、「自身が個人として経験した不動産売買や相続のときの経験や気持ち」を大切に、お客様の立場にたった接客を心がけている。

>>相続の専門家に相談する

【オススメ記事】
民法改正で遺言執行者の権限が明確化される
民法改正で不当な財産処分ができなくなる
相続の面倒は銀行にお任せ!遺言信託とは
民法改正で相続の効力等に関する見直しが行われる
準確定申告が必要な人・不要な人

この記事をシェア

相続MEMOをフォロー

相続のプロに聞く

PREV 【司法書士の目~VOL.12】「家族信託」と何が違う?「生命保険信託」とは?