2020.4.13
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.13】家族信託開始後にすべき10のこと

(画像=maroke/Shutterstock.com)
(画像=maroke/Shutterstock.com)
近年、認知症対策として「家族信託」が急速に普及しています。特に高齢の親の財産を子どもが代わりに管理・処分する目的で利用され、弊社での取り扱い件数も増加しています。

家族信託は、委託者(=財産の管理を託す人)と受託者(=代わりに財産を管理する人)が信託契約を締結することによって始まるのが一般的ですが、家族信託が始まってから具体的に何をすべきか、ご存知でない方も多いのではないでしょうか。

今回は、「家族信託開始後にすべき10のこと」について解説したいと思います。これから家族信託を始めようとする方にとって必見の内容です。是非、ご一読下さい。

※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?をご覧ください。

①    信託口口座の開設

家族信託が開始すると、受託者は「分別管理義務」という義務を負わなくてはなりません。分別管理義務とは、委託者から預かっている信託財産と受託者個人の財産を分別して管理する義務をいいます。

金銭を信託する場合、一般的には「信託口口座」という信託専用の口座を開設することが推奨されています。
この口座は必ずしも法律上必須とされるものではありませんが、受託者が死亡した場合であっても凍結しない、受託者が破産などをした場合であっても影響を受けないなど、特殊な機能を有する口座です。
分別管理義務を徹底するため、信託口口座の開設を弊社でもおすすめしています。

信託口口座を開設する手順は、金融機関によって異なります。一般的には、信託契約を締結する前に、信託契約書の案文を金融機関に提出し、審査を受けることになります。
信託契約書は、公正証書で作成されたものでないと開設ができない金融機関が多いです。

しかし、信託口口座の開設に対応している金融機関は全国でもまだ限られています。近くに対応可能な金融機関が無い場合は、受託者名義の通常の預金口座を新たに開設し、そこで信託された金銭を管理することで、分別管理の義務を果たすという方法も考えられます。

いずれにせよ、信託財産が受託者の下で適切に管理できる状態を整えておくことが非常に重要です。

②    信託金銭の移動

信託契約を締結し、信託口口座を開設したら、委託者の口座から信託口口座へ信託金銭を移動させることが必要です。
信託契約を締結したことに安心して、金銭の移動をしないまま放置してしまうのは大変危険です。

親の認知症対策のために信託契約を締結したにも関わらず、金銭を移動しないまま親が認知症を発症してしまった場合には、信託金銭を信託口口座に移せず家族信託を行った意味がなくなってしまいます。

信託契約を締結し信託口口座の開設を終えたら、速やかに信託金銭を移動させましょう。

③    信託登記の手続き

不動産を信託した場合、その不動産を受託者の名義とする登記手続きを行う必要があります。なぜなら、不動産が信託されていることを公示しなければならないからです。

信託の登記は、信託目録の作成など登記手続きの中でも専門性の高い手続きが必要となりますので、司法書士に依頼するのが一般的です。

信託による名義変更の登記は、売買や贈与の登記手続きと同様に、委託者と受託者と共同で申請を行う必要があります。信託登記をするには登録免許税という税金を納付する必要があります。現在、登録免許税は、土地が固定資産税評価額の0.3%、建物が固定資産税評価額の0.4%となります。

中には、家族信託を利用して不動産を信託したものの、登録免許税の支払いを回避するためにあえて登記をしない方もいるようです。

しかし、これは受託者の分別管理義務違反になります。これでは受託者が不動産を売却することもできませんし、賃借人や不動産管理会社などの第三者に信託の事実を公示することもできません。
不動産を信託したら、速やかに専門家へ登記手続を依頼しましょう。

④    建物の火災保険等の契約者変更

不動産を信託し登記をすることによって、建物の名義が受託者に変わります。これに伴って、火災保険等の契約名義も受託者に変更することを検討しなければなりません。

この手続を怠ったことによって、保険金が給付されず損害が生じれば、受託者は損害賠償責任を負うことになります。

具体的な手続きの方法は、保険会社、保険契約の時期や内容によって異なりますので、信託契約や登記手続を終えたら、保険会社へ問い合わせると良いでしょう。

⑤    不動産管理会社や賃借人への対応

信託した不動産がアパートや駐車場などの収益物件であった場合、賃貸人としての地位は受託者が当然に引き継ぐことになります。
とはいえ、今後の賃料振込口座が受託者の信託口口座となりますので、これを事前あるいは事後に賃借人らへ通知をする必要があります。

賃料回収を不動産管理会社に委託している場合であれば、その不動産管理会社へ通知することが必要です。弊社では、信託契約の締結前に、不動産管理会社と事前に調整を行い、信託がスムーズに開始できるよう心掛けています。

また、厳密には、信託が開始する日以降の賃料は、受託者が受け取るべきものになりますので、月の途中で信託が開始すると、賃料を日割りで清算する必要が生じ得ます。
そこで、信託の開始時期が月の初日からとなるよう、信託契約の効力発生日を別途定めるケースもあります。

⑥    公共料金や固定資産税、施設利用費の引落口座の変更

家族信託の開始後、信託事務で必要となる費用の支払いや受益者への給付は、信託口口座から行う必要があります。

信託口口座で一元管理をしていくため、固定資産税など、自動引落にしているものがあれば、それぞれ引き落とし口座を変更する手続きが必要になります。
信託契約の締結後、各所に連絡をしてスムーズな信託事務・財産管理ができるようにしましょう。

⑦    帳簿の作成

受託者は、信託の開始後、帳簿を作成する義務が課されています。
帳簿と聞くと大変な印象を受けるかも知れませんが、受託者が作成すべき帳簿は、必ずしも会計実務と同様なものが必要となるわけではありません。

例えば、自宅の信託などであれば、信託口口座の通帳のコピーに日々の入出金を書き込んでいくような方法でも可能とされています。

これに対して、複数の収益物件を同時に信託するような場合などは、税理士などの専門家に依頼した方が賢明でしょう。
信託財産の規模や信託の目的などに照らして、適切な帳簿を作成・管理しましょう。

⑧    受益者別調書及び受益者別調書合計表の提出

受託者は、信託の効力が発生したとき、原則として受益者別調書及び受益者別調書合計表を税務署に提出する必要があります。

ただし、委託者と受益者が同一であるときは例外的に不要とされています。家族信託の多くのケースでは委託者と受益者が同一(「自益信託」といいます)ですから、この場合は提出が不要ということになります。

⑨    信託計算書及びその合計表の提出

受託者は、毎年1月31日までに、信託の計算書及びその合計表を提出する必要があります。ただし、信託財産に帰せられる収益額が3万円以下となる場合は提出が不要となります。

この手続は、収益物件を信託した場合に、定期的に必要になる手続きです。顧問の税理士などに忘れずに確認しておきましょう。
なお、確定申告については従来どおり受益者が行います。

⑩    不動産所得の金額に関する明細書を作成

受益者は、毎年の確定申告の際に、不動産所得用の明細書の他に、信託から生ずる不動産所得の金額に関する明細書を作成・添付する必要があります。

最後に

家族信託は、信託契約書を作成して終わりというわけではありません。契約書の作成は、スタートに過ぎません。大切なことは、信託開始後、受益者のために信託財産を適切に管理し、信託事務を遂行していくことです。信託開始後も、当初の信託目的を忘れないようにしましょう。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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