2020.4.15
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.14】家族信託をはじめる前に知っておくべき10の注意点・デメリット(1)

(画像=Apple_juice/Shutterstock.com)
(画像=Apple_juice/Shutterstock.com)
認知症対策の切り札として近年注目されている「家族信託」。
家族による財産管理が可能となる、成年後見制度に比べてコスト面など家族の負担が少ないなど、家族信託には他の制度にない様々なメリットがある一方で、事前に必ず知っておくべき注意点がいくつかあります。

今回は、その中でも特に重要なものをとり上げてみたいと思います。

※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは? 

①元気なうちにしかはじめることができない

家族信託には様々な機能がありますが、最も効果的なのは、認知症による財産凍結を防ぐ機能です。
認知症を発症し判断能力が低下してくると、自分で自分の財産を管理・処分することができなくなり、財産が凍結する可能性があります。

つまり、老後資金として貯金していたお金が使えなくなってしまったり、老人ホームの入居一時金などを捻出するために自宅を売却することができなくなってしまうおそれがあるということです。

そこで、事前に家族信託を利用して、お金や不動産の管理権限を受託者に託しておくことにより、認知症による財産凍結を防ぐことができるのです。

ところが、家族信託の利用を検討しているご家族からの相談でよくあるのは、すでに認知症を発症しており家族信託ができないケースです。

誤解している方も多いのですが、家族信託は認知症対策として非常に有用ですが、認知症になってしまったら家族信託を行うことはできません。なぜなら、家族信託を開始するにも判断能力が必要であるからです。 

利用を検討している方は、早めに開始することをオススメします。

②開始と同時に受託者へ信託財産の管理権限が移る

家族信託は、委託者(財産管理をお願いする人)と受託者(財産管理を任される人)が信託契約を締結することによって開始します。

信託契約の中で、委託者が有する財産のうち、どの財産の管理を受託者にお願いするのかを決定し、その財産を「信託財産」といいます。

そして、信託財産の管理権限は、信託契約と同時に「受託者」に移転します。信託した金銭は、委託者の口座から受託者が新たに開設する口座に移すことになります。

また、不動産は、信託登記をすることにより受託者の名義に変更することになります。家族信託の場合、委託者が引き続き受益者として信託財産から利益を受けることができる設定にするのがほとんどですので、実体は変わらないとも言えますが、信託した財産は「自分の手元」からはなくなります。
信託開始後は、受託者から給付を受けることになるのです。

①で述べたように、家族信託は元気なうちに開始しなくてはならないので、まだ自分でできる状態にも関わらず、受託者に財産管理を委ねるのを躊躇される方も多く見受けられます。
そのため、元気なうちに信託契約を締結しておきながら、「認知症などで判断能力がなくなったら信託が開始する」という設定の契約はできないのか、という相談を受けることがよくありますが、実務上はあまりオススメできません。

なぜなら、そのような開始時期が付された契約も法律上は有効ですが、信託が開始したときに判断能力がないわけですから、信託する金銭を引き出して受託者の口座に移したり、信託した不動産を登記したりすることができなくなるリスクがあるからです。

信託を開始する時期や信託する財産については、専門家の意見も聞きながら、事前に十分に家族で話し合っておきましょう。

③はじめるのにコストがかかる

家族信託を開始するにもコストがかかります。家族信託は「認知症対策」として利用されるケースがほとんどですから、認知症などで判断能力を喪失しなかった場合には、家族信託にかかった費用は無駄になってしまったともいえます。
言うなれば、掛け捨ての認知症「保険」のようなものとも言えます。

家族信託を開始するには、大きく分けて、登録免許税・公証人費用などの実費と司法書士・弁護士などの専門家報酬がかかります。特に専門家の報酬は依頼する専門家ごとに異なりますので、事前にしっかり確認しておきましょう。

家族信託はどのご家庭でも必ず必要というわけではありません。ご家族の状況、構成などを考慮に入れながら、要否を冷静に見極めましょう。

※家族信託の費用などについては、【司法書士の目~VOL.3】「家族信託」は誰に頼めばいい?かかる費用は?

④どの専門家でも対応できるわけではない

家族信託は遺言や成年後見に比べると、比較的新しい制度であるため、どの専門家も家族信託の相談に対応できるわけではありません。

また、法律上・税務上運用が未だ定まっていない部分もありますので、専門家によって見解が異なる領域も存在します。

一般的に、家族信託の相談窓口は、司法書士、弁護士、税理士になることが多いですが、それらの資格を有するからと言って信託に精通しているわけではありません。
信託の相談に対応するためには、相続・成年後見など周辺実務の経験が必ず必要となります。

家族信託の相談をする際は、慎重に専門家を選定しましょう。なお、ほとんどの家族信託では、信託財産に自宅などの不動産が含まれており、不動産を信託した場合には信託登記が必要となるので、司法書士が窓口になることが最も多いとされています。

※詳細は、【司法書士の目~VOL.3】「家族信託」は誰に頼めばいい?かかる費用は?をご覧ください。

⑤受託者の責任が重い

法律上、財産管理を託される受託者は重い責任を負うことになります。いくら家族だといっても、他人の財産を管理していることには変わりないからです。具体的には、善管注意義務・忠実義務・公平義務・分別管理義務など信託法上様々な義務を負います。
これらの義務に違反した場合には、ケースによっては損害賠償請求をされたり、受託者を解任されたりする可能性があります。

受託者になろうとする方は、必ず事前に専門家から受託者の義務や事務について説明を聞いておきましょう。信託開始後に、「知らなかった」では済まされません。
受託者の責任や役割をしっかり理解した上で、信託を開始しましょう。

家族信託を組成した専門家が、信託開始後の受託者の信託事務についてアドバイスなどをするサービスもありますので、利用を検討してみるのもいいでしょう。
また、専門家が信託監督人や受益者代理人となり、受託者を監督・牽制する方法も考えられます。

どのような体制で信託を開始するのが一番良いのかは、ご家庭によって異なります。一度専門家に相談してみるとよいでしょう、

最後に

以上のように、家族信託を開始するには様々な注意点があります。開始する際は一度専門家に相談してみましょう。次回は下記の注意点について確認したいと思います。

⑥どの金融機関でも信託口口座を開設できるとは限らない

⑦受託者は信託財産以外の財産管理には対応できない

⑧受託者は身上監護には対応できない

⑨損益通算ができない

⑩新たなに税務上の手続きが必要になる場合がある

 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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