2020.6.24
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相続のプロに聞く

【実例】不動産オーナーが事業継承で失敗しないために知っておくべき大事なこと/KENbridge(愛知県名古屋市)

親、子、孫。そしてそれぞれの家族。不動産を含む資産相続は、関係者が多いほど複雑になりがちです。しかし争族はできるだけ避けたいものです。そんな悩みをもつ相談者さんの事例を取り上げます。

亡くなった母の願いは大切にしたい。しかし複雑な家族関係も心配

今回の相談者は、複雑な家族関係が「争続」につながるのではないかと心配するAさん(54歳・女性)です。それというのも、Aさんの母親は愛知県の自宅とビル1棟、マンション1棟、現金3,000万円という多くの資産を所有していたからです。これらの資産をどのように分けたらいいのか。父親は数年前に亡くなっており、母親が亡くなった今、一般的にはAさんと妹の2人での遺産分与となります。妹には子どもがおらず姉妹の関係は良好なため、2人の間の話し合いはスムーズなのですが、Aさんには自分が生きている間に、自身の子どもの代の相続まで整理しておかなければならない理由がありました。

Aさんには翔太さん(仮名・次男)と昌夫さん(仮名・長男)という2人の息子がいます。複雑なのは、次男の翔太さんだけが生前のAさんの母親と養子縁組をしていること。長男の昌夫さんは祖母であるAさんの母親と折り合いが悪く、けんか別れのように家を飛び出していました。Aさんの母親はビルとマンションのオーナー業を、かわいい孫である翔太さんに継がせたいと考え、養子縁組をしたといいます。

亡くなった母親の思いを大切にしたい。一方で、明らかに公平でない財産分与に対して、息子たちが争うことになったらどうしよう……。Aさんは悩んでいました。悩みの種はこれだけではありません。Aさんは夫と30年以上前から別居しており、戸籍上は夫婦ですが事実上は離婚している状態でした。夫婦関係は破綻しているとはいえ、今、Aさんが亡くなったら、Aさんの財産は夫に渡ってしまいます。Aさんが亡くなった後の相続は、夫、息子2人の間で泥沼化することが予想されました。

さてAさんはどうやって、この問題を解決したのでしょうか?

問題のポイント

1.子ども2人の財産分与が公平でないため、相続トラブルが発生する可能性がある
2.Aさんが亡くなると母親から相続した財産が、事実上離婚状態にある夫に渡ってしまう

絡み合った糸を解きほぐし、解決方法を探る

Aさんは、相続争いにならないように知識を付けようと、最寄りの「不動産相続の相談窓口」が開催している相続勉強会に参加しました。

勉強会の後、相談にのってくれたのは、愛知県名古屋市にある不動産会社、KENbridge(ケンブリッジ)の代表で勉強会講師を務めていた野田直希さんでした。KENbridgeは居住用アパートやマンションを中心におよそ50棟・1,000戸の不動産賃貸管理事業を行っており、不動産資産運用のコンサルティングに定評がある会社です。

相談を受けた野田さんは、ビルやマンション、自宅や現金といった資産についてではなく、複雑な家族関係について質問し、関係性を理解することから始めました。

息子さんが2人いること、Aさんの母親のたっての希望で息子さんの1人と養子縁組していること、夫はいるが別居していること。Aさんは話をしているうちに、夫と別居することになった理由まで打ち明けていました。

詳細を聞いて野田さんが一番の問題だと感じたのは、Aさんと夫との関係でした。修復できるのかできないのか、このことに向きあうことが、Aさんご一家の相続トラブルを回避する上で最も重要だと判断しました。30年間目を背けていた問題と向き合い、Aさんが出した答えは「夫との関係は修復できない」というものでした。そこで野田さんはAさんに、「まずは、ご主人との離婚手続きに着手してください」と伝えました。

Aさんはその提案を受け入れ、まず夫と正式に離婚をすることで財産が夫の手に渡らないようにしました。その上で野田さんは、長男の昌夫さんに父親の財産を引き継がせることを提案しました。Aさんの夫もいくつかの不動産を所有しており、これらを昌夫さんが相続することで長男、次男の財産分与の均等化が図れると考えたからです。

加えて次男の翔太さんには法人を設立させ、その法人がビルとマンションの賃貸業を行う形にしました。個人所有の建物を新しく設立した法人が「6700万円で買い取る」というわけです。翔太さんが借金を背負う方が、祖母からの「贈与」より長男の昌夫さんと揉める要素が少ないと考えました。また、法人を設立することによって、長期的には所得税の節税になり翔太さんにもメリットがあります。ビルの月額家賃収入120万円とマンションの月額家賃収入50万円を役員報酬として受け取ることで給与所得控除の対象となり、個人で受け取るより所得税を減税できます。

Aさんの妹には母親が遺した現金3000万円を渡し、Aさんが自宅を相続することですべての問題を円満に解決できました。

事業継承で重要なのは、これからの再投資計画

Aさんの次男である翔太さんが相続したビルは、1970年代に建てられたもので老朽化していました。一方で、人気の私立中学、高校、大学がある文教地区に位置し、最寄り駅から徒歩1分。資産価値が高いことから将来の需要を見越して今、建て替えを勧めるのが一般的です。建て替えて新しい人気物件となれば、家賃収入のアップが狙えるからです。

ただ翔太さんは、不動産賃貸業はまったくの素人。このタイミングで大きな借金を抱える再投資はリスクがある、と野田さんは考えました。そこで、ひとまずは2棟合わせて2700万円程度の費用をかけてリノベーションを実施。解体する場合の費用を算出し、余裕資金ができる15年後の建て替え計画を練りました。翔太さんには、自社の開催する宅建勉強会などに参加してオーナー業に必要な知識を身に付けてもらい、15年後、知見が深まった40代になった頃に再投資する形がベストだと野田さんは考えました。

問題解決までの流れ:

・相談勉強会に参加
・家族関係や資産概要、相続についての考え、相談者自身が気付いていない問題点を探る
・「相談者は夫と正式に離婚」「長男には夫の財産を引き継がせる」「次男は法人を設立、オーナー業教育開始」「相談者の妹には母親が遺した現金を渡す」という、問題解決策を提案、実行
 

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不動産は「先祖からの贈り物」として大事にしたい

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野田さんは、このようなオーナー業の事業継承案件を請け負う場合、「徹底して相続する側のやる気を確認するようにしている」といいます。

たとえば以前、2人姉弟の姉側から相談に乗って欲しいと言われたことがありました。親のいくつかの不動産を相続するにあたって、長男である弟が跡継ぎとして決まっているけれど、自分も取り分が欲しいのでどうしたらいいだろうかという相談内容でした。ご相談者の方の希望を満たすのであれば、不動産を売却して現金をきっちり半分ずつ分け合うという提案ができました。もしくは、不動産を姉弟で分けて、それぞれに不動産賃貸業をやるか、それとも売却するかを考えるということも考えられます。ですが野田さんは、そのどちらも勧めずただ、「弟さんにすべての不動産を任せ、オーナー業を継続するために協力するといいですよ」と伝えたと言います。

「不動産の詳細を聞いたところ、今後も安定した賃料収入が得られる収益物件でした。弟さんは不動産会社に勤めていて事業に精通している。一方で相談者である姉は、できる限り今、多くのお金を相続したいという考えであることがわかりました。先祖代々受け継いできた土地やビル、マンションはどれほどの優位性があるのか、まったく理解していないんですね。今から多額の借金をして不動産を手に入れ、リスクは少なくそれほどの収益性がある事業を始めるのは夢のような話なのですから。

”たわけ者”のたわけは、”田分け”と書くそうです。子どもの人数で田畑を分けていくと、孫、ひ孫へ受け継がれていくうちにそれぞれの持つ面積が狭くなり、少量の収穫しか入らず先細って家系が衰退する。そのような愚かな行為をする人を”たわけ者”と呼ぶようになったとか。田畑=不動産を分けずに、収穫=賃料収入を分けた方がいいという考え方ですね。私はこの価値観を、亡くなった祖父から教わりました」(野田さん)

先代から受け継いだ恩恵を取り合うのではなく、優位性を理解し、再投資を行い、今後の戦略を考え事業を継続し、次の代も含めての繁栄につなげる。不動産資産運用コンサルティングを行うとき、野田さんが最も大切にしたいと考えていることです。

【今回相談に乗っていただいた担当者】
<野田直希(のだ・なおき)さんプロフィール>
 
野田直希 チラシ用
1979年名古屋市生まれ。東京の大学を卒業後、全国に600店舗を構えるアパレル会社入社、1年目からトップクラスの営業成績を残し、4年目には店長として全国売り上げ1位に導いた。2007年、結婚を機にKENbridgeの親会社である東海会館に取締役として入社。不動産仲介、賃貸管理、ビルメンテナンスの業務に従事。2014年、相続・不動産コンサルティング事業を立ち上げ、2016年、KENbridge設立。
 

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