2020.7.2
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.18】家族信託を専門家に依頼する際の5つのチェックポイント

(画像=mickyso/stock.adobe.com)
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 近年、超高齢社会がますます進展する中で問題となっている「認知症による資産凍結」の問題。対策の切り札として注目されているのが「家族信託」という制度です。家族信託とは、文字どおり「家族」を「信」じて財産管理を「託」すものです。家族による財産管理が可能となる、成年後見制度に比べてコスト面など家族の負担が少ないなど、家族信託には他の制度にない様々なメリットがあります。近年、家族信託はその利用件数が飛躍的に増えてきています。その背景には上述のようなメリットについての認識が広まってきたことがあげられるでしょう。
※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?をご覧ください。
 
 一般的に、家族信託を開始するには弁護士・司法書士などの専門家に依頼することになりますが、今回は「家族信託を専門家に依頼する際の5つのチェックポイント」について確認してみたいと思います。士業などの専門家に家族信託のことを相談・依頼した経験のある方は多くないと思われますので、本コラムが参考になれば幸いです。

①家族信託に関する実務経験があるか

 家族信託は、遺言や成年後見制度に比べると歴史が浅い新しい制度です。家族信託は、信託法という法律が2007年(平成19年)に改正されたことを契機に利用が増えてきましたが、実際に浸透してきたのはここ3~4年の話です。したがって、必ずしもすべての専門家が家族信託の実務経験があるわけではありません。ホームページやパンフレットなどに家族信託と謳っていても、実は経験が豊富でない専門家もいるかもしれません。相談や依頼する際は、今までどのくらいの案件を扱ったことがあるのかを聞いてみましょう。20件くらいの実務経験があれば、実績豊富な専門家といえるかと思います。また、もし近くに家族信託を行った方がいれば、依頼した専門家を紹介してもらうと良いでしょう。

②事前にきちんと費用の説明があるどうか

 家族信託を行うには、それなりの費用がかかります。決して安くない金額ですので、事前にしっかりと見積りをもらっておくことが大切です。家族信託にかかる費用は、専門家の報酬と登録免許税・公証人費用などの実費です。
 専門家の報酬は、依頼する専門家により異なってきます。一般的には、信託する財産の価格によって報酬が変わってきます。例えば、信託財産の価格×1%のように定めている専門家が多いようです。ということは、信託する財産が多くなるほど専門家の報酬は高額になるので、「どの財産を信託するのか」が費用の面からも非常に重要となります。単純に全財産を信託するのではなく、ライフプラン、財産構成、年齢などを考慮しながら信託財産の選定についてアドバイスしてくれる専門家が理想的です。
 不動産を信託した場合には、法務局で信託登記をしなければなりませんので、「登録免許税」という税金がかかります。登録免許税は、土地については、固定資産税評価額の0.3%(令和3年3月31日までの軽減措置)、建物については、固定資産税評価額の0.4%です。不動産の固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書や固定資産税評価証明書などで確認ができます。例えば、土地の評価額が1,500万円であれば、【1,500万円×0.3%=4.5万円】、建物の評価額が500万円であれば、【500万円×0.4%=2万円】となります。なお、委託者(財産を預ける人)と受益者(信託から利益をうける人)が同一人物である信託(自益信託といいます。ほとんどの家族信託はこのパターンに該当します)の場合、贈与税や不動産取得税はかかりません。
 家族信託契約は、非常に重要な契約ですので、後々のトラブルを防止するため、公証役場で「公正証書」によって作成するのが一般的です。公証人の費用は、信託する財産の価額、契約書の分量などによって異なりますが、一般的には、5万円~10万円程度です。当事者が公証役場に行くことができず、公証人が自宅や病院などに出張する場合には、出張費用が別途発生します。
 上記の他には、資料収集費用や郵送費としておおむね1万円程度かかります。

③成年後見・相続・遺言の実務に精通しているか

 家族信託の実務を行うにあたっては、家族信託だけを知っていれば良いわけではありません。周辺領域についての知識や経験も必要となります。
家族信託は、多くのケースで「認知症対策」を目的として行われることになります。認知症により判断能力を喪失する前に、委託者から受託者に財産の管理権限を移しておくことで財産の凍結を防ぐことができます。判断能力が低下・喪失してしまった場合の財産管理制度には、「成年後見制度」という制度もあります。成年後見制度とは、判断能力が不十分な人を法律面や生活面で支援する制度で、家庭裁判所が運用しています。判断能力が不十分な人を支援する人を後見人、支援される人を被後見人といいます。この成年後見制度と家族信託の違いや双方のメリット・デメリットについて専門家からしっかり説明をうけ十分に理解した上で、家族信託を行うことが大切となってきます。聞いた話によると、「家族信託」ありきの提案を行う専門家もいるようですので十分注意しましょう。
また、ほとんどの家族信託は、委託者(財産を預ける人)が亡くなった場合には終了し、信託契約で定められた承継者(「帰属権利者」といいます。)に信託財産が引き継がれることになります。よって、同じく人が亡くなった場合の財産の承継の話である相続・遺言の分野についての知識や経験も家族信託を行う上では必須といえるでしょう。
 現状、家族信託の相談先として司法書士や弁護士が多いのは、これらに精通しているという理由が一番大きいと思います。家族信託を理解しクライアントにサービス提供を行っていくためには、成年後見・相続・遺言に精通している必要があるのです。
 

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④他の専門家と連携しているか

 家族信託の案件では、相続税など税務上の検討点を考えなければならないことがよくあります。その際は、依頼する専門家が司法書士や弁護士などであった場合には、税理士と連携して対応してもらう必要があります。
また、家族信託を行うときというのは、今後の住まい、暮らし、お金などのライフプランについて考えるタイミングです。不動産の専門家、ファイナンシャルプランナー、介護・福祉の専門家などと一緒にトータルでサポートしてくれる専門家に依頼するのがベストといえるでしょう。

⑤家族信託の開始後のサポートが充実しているか

 家族信託は、委託者と受託者が信託契約を締結することによって開始しますが、言うまでもなく大切なのは、家族信託が開始した「後」です。ところが、中には家族信託の開始だけをサポートして、開始後のサポートを特に行わない専門家もいるようです。家族信託開始後のアフターサポートが充実している専門家に依頼することをおすすめいたします。

<最後に>

今回は、「家族信託を専門家に依頼する際の5つのチェックポイント」をお伝えしました。「専門家」と聞くと、敷居が高く感じられる方も多いと思いますが、専門家もサービス業です。不安や不明な点があれば、遠慮なく質問してみましょう。それでは、次回もお楽しみに。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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