2020.7.4
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.19】家族信託を始める前に要チェック!成年後見制度のメリットとデメリット

(画像=takasu/stock.adobe.com)
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近年、家族信託の利用が急速に増えてきています。その背景には、超高齢社会が進むにつれ問題となっている「認知症による資産凍結」の問題があります。高齢者が認知症になることで、判断能力(=物事のメリット・デメリットを理解する力)が低下し、自身のお金や不動産を管理できなくなってしまうのです。家族信託とは、文字どおり「家族」を「信」じて財産管理を「託」すものです。家族信託には他の制度にないさまざまなメリットがあります。利用件数が飛躍的に増えているのは、この家族信託という制度が知られるようになってきたためでしょう。。

※家族信託の制度説明については、【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?をご覧ください。
 
ところで、「認知症による資産凍結」の対策としては、家族信託よりも「成年後見制度」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。成年後見制度もまた、認知症等により判断能力が低下した方の財産を守るために利用される制度です。
これから対策を考える方々にとって大切なのは、自身の家族に適切な財産管理の方法を、しっかり見極めて実行することです。そこで今回は、「家族信託を始める前に要チェック!成年後見制度のメリットとデメリット」というテーマを解説します。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、主に認知症などが原因で判断能力が低下した人(この手続きでは「本人」と呼びます)を支援するための制度で、家庭裁判所が運用しています。支援する人を後見人、支援される人を被後見人といいます。成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。
法定後見制度では、判断能力低下後に家庭裁判所が後見人を決定します。「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、本人の判断能力の程度などに応じて制度を選べるようになっています。家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等が、本人の利益を考えながら,本人を代理して契約などの法律行為を行うことで、本人を保護・支援します。
任意後見制度は、本人が元気なうちから、将来判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、自ら後見人を選んでおくものです。この制度を利用するためには、事前に任意後見受任者(任意後見人となる予定の者)との間で公正証書により契約を締結しておく必要があります。また、任意後見開始時には、任意後見人を監督する任意後見監督人が家庭裁判所によって選任されます。

それでは、まずは成年後見制度のメリットから確認していきましょう。

成年後見制度のメリット① ~財産管理だけでなく身上監護の権限がある~

後見人には、財産管理の権限のほかに、身上監護の権限が認められています。身上監護の権限とは、例えば病院の入院手続きや施設の入所手続きなどを代わりに行うことをいいます。特に、近親者のいない単身の高齢者には、財産の管理だけでなく、本人に代わってさまざまな手続きを行うことができる後見人の存在が非常に大切です。
家族信託の場合、受託者である家族に託せるのは原則として信託財産についての財産管理だけです。身上監護については、一般的に家族であれば代行できる場合がほとんどですが、家族信託における受託者には身上監護の権限はないので留意しましょう。
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成年後見制度のメリット② ~本人の全財産に管理権限が及ぶ~

後見人は、原則として「本人の全財産」を管理することができます。後見人には「本人の代理人」という性質がありますので、後見制度を利用するときに特定の財産を選択する必要はなく、代理人として全財産が対象になります。後見制度の利用を開始した後に受給した年金や、家賃収入なども同様です。ただし、自宅の売却など、家庭裁判所の許可が必要な事項もあります。
家族信託の場合、開始する時点で、信託する財産を特定する必要がありますので、受託者の権限はすべての財産におよぶというわけではありません。また、将来受け取る年金を信託することはできません。

成年後見制度のメリット③ ~より安全な財産管理が期待できる~

成年後見制度は、家庭裁判所が運用している制度です。制度を利用すると年に1回、年間の財産管理状況を家庭裁判所に報告します。また、前述のとおり、自宅の売却などには家庭裁判所の許可が必要となります。財産管理がずさんな場合、家庭裁判所等から指摘を受けるほか、後見人を解任されることもあります。これらの監督機能は、後見人による財産の使い込みなどから本人の財産を守るためのものです。
家族信託の場合、家庭裁判所が関与することなく、一部の家族だけで始めることができます。自由な財産管理が可能である一方、本人の財産を守るという意味では、別の対応(信託監督人・受益者代理人などを信託契約において設定する)を検討する必要があります。

続けて、成年後見制度のデメリットを確認しましょう。

成年後見制度のデメリット① ~財産の処分・運用に制限がある~

成年後見制度は、本人の財産と生活を守ることが目的です。つまり、ある行為が他の家族にとって利益になることであっても、本人にとって不利益であれば原則として認められません。たとえば、将来発生する相続税を圧縮するため、銀行から融資を受けて不動産を購入するような場合があります。相続税の圧縮は将来の相続人のためであり、本人のためではありません。本人にとっては、銀行から借金する「リスク」しかないので、成年後見制度では認められません。

成年後見制度のデメリット② ~家族ではない者が関与する~

成年後見制度を利用した場合、定期的に家庭裁判所への報告が必要となります。たとえ家族が後見人であったとしても、この報告を怠ることは認められません。また、管理方法に問題があれば家庭裁判所から説明を求められ、是正を指示されます。
法定後見制度の場合、後見人として専門家が選任されることがあります。統計的にも、実に約7割のケースで、家族ではなく司法書士や弁護士などの専門家が選任されています。専門家が選任される理由は、財産の種類や多寡、家族構成などさまざまです。専門家が後見人として選任された後は、預金通帳などを後見人が預かることになります。
任意後見制度の場合、後見人は自分の希望する後見人候補者人が基本的に選ばれますが、同時に任意後見監督人が選任されます。任意後見監督人は原則、家庭裁判所が選任した弁護士・司法書士などの専門家が選ばれます。
このように、後見制度の利用によって、家庭裁判所や専門家が家族の財産管理に関与することになります。これまで当たり前のように家族だけで財産管理をしていた場合、他者が関与することに抵抗感を覚えるかもしれません。

成年後見制度のデメリット③ ~ランニングコストの問題~

後見人には、前述のとおり必ずしも家族が選任されるわけではなく、司法書士や弁護士などの専門家が選任されるケースがあります。専門家が選任された場合、財産額に応じて報酬(月3万円~4万円程度)が発生します。
その他、財産が多い場合や任意後見制度を利用した場合など、後見人を監督する後見監督人が選任されます。後見監督人はほとんどのケースで専門家が選任されますので、上記と同様に報酬(月1万円~2万円程度)が発生します。

最後に

今回は、「家族信託を始める前に要チェック!成年後見制度のメリットとデメリット」について解説しました。高齢期における財産管理の方法は1つではありません。それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで、最適な財産管理を検討していきましょう。それでは、次回もお楽しみに。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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