2020.7.29
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相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.20】家族信託を始める前に要チェック!“相続法”大改正のポイント①

(画像=mapo/stock.adobe.com)
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約40年ぶりの“相続法”大改正

 2018年の民法(相続法)改正により、2019年1月から新しい相続の制度が順次施行されています。今回の改正は、超高齢社会の進行など社会環境の急速な変化に対応するために行われたもので、実に約40年ぶりのこと。新制度の開始に伴い、今後相続は大きく変わっていくことになるでしょう。
 家族信託と相続は非常に密な関係で、家族信託を開始する際には、相続についても同時に検討しなければなりません。特に今回の改正点である遺言制度や遺留分制度は、しっかりと理解しておく必要があります。また、新制度である配偶者居住権は、認知症対策として用いられる家族信託と比較し、検討することが重要です。

改正の概要

 今回の改正の概要は下記のとおりです。一斉に新しい制度が始まるわけではなく、段階的に施行されていく点には注意が必要です。原則的な施行日は2019年7月1日で、新制度の多くはこの日から開始されています。

【2019年1月13日施行】 
自筆証書遺言の方式緩和

【2019年7月1日施行】 
配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
遺産分割前の払戻し制度の創設等
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
遺言執行者の権限の明確化等
遺留分制度に関する見直し
相続の効力等に関する見直し
相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

【2020年4月1日施行】 
配偶者短期居住権・配偶者居住権

【2020年7月10日施行】 
自筆証書遺言の保管制度

 今回は施行日が最も早かった「自筆証書遺言の方式緩和」について確認してみましょう。

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遺言とは

 遺言とは、自分の財産を誰にどのように承継させるかを決めておく書面です。相続対策ニーズの高まりとともに、遺言の作成件数は増加しているといわれています。今後は家族信託と遺言を同時に作成するようなケースも増えてくるでしょう。
 遺言には、次のようなメリットがあります。
①    “争族”を防止できる
 遺言がなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。しかし、協議がうまくいかず、紛争に発展してしまうケースが増えています。遺言により分割方法を決めておくと、このような紛争を防止することができます。

②    相続人が相続手続をスムーズに進めることができる
 遺言があると、相続発生後すぐに相続手続に着手することが可能です。また、上で述べたように遺産分割協議が不要となりますので、相続手続にかかる時間を短縮できます。

③    自分の思い通りに財産を承継できる(可能性が高くなる)
 遺言に記載すれば、自由に承継先や配分を決定できます。遺留分に配慮する必要がありますが、法定相続分どおりに分ける必要はありません。また、相続人ではない人に遺贈したり、慈善団体に寄附したりすることも可能です。

遺言の種類

 遺言には下記のとおり4種類あります。遺言者が自筆で作成する「自筆証書遺言」と、公証人が作成する「公正証書遺言」のどちらかが利用される場合がほとんどです。

①自筆証書遺言
・遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印鑑を押すことによって成立する遺言(民法968条)
・遺言執行時には家庭裁判所で「検認」が必要となる(ただし、遺言書保管制度を利用した場合は不要)
②公正証書遺言
・公正証書によって作成する遺言(民法969条)
・公証人の前で、遺言の内容を口授し、公証人がその内容を文書にする
・証人が2名必要となる
③秘密証書遺言
・一定の方式に従うことにより、遺言書の内容を秘密にできる遺言(民法970条)
・公証人の関与が必要となる
・検認が必要となる
④危急時遺言
・遺言者に死亡の危険が迫っている場合に、一定の方式に従うことにより、上記①~③の方式によらずに作成できる遺言(民法976条)
・遺言の日から20日以内に家庭裁判所で「確認」という手続きを必要となる。

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自筆証書遺言の作成が容易に

自筆証書遺言は、第三者の関与なく自分だけで作成できる一方で、全文を自筆しなければならないことが大きな負担でした。特に財産の種類が多い場合、その全てを正確に手書きするのは非常に大変です。
 それが、今回の改正により、財産目録(財産の一覧表)については、手書きの必要がなくなりました。今後は、パソコンでの財産目録の作成が認められ、不動産登記事項証明書や通帳のコピーを財産目録とすることも可能になります。手書きをする項目は基本的に、「日付」「氏名」「財産目録のどの財産を誰に相続させるのか」のみとなります。
 改正の主な目的は、自筆証書遺言の利用を増やすことにより“争族”を防止することにあるとされています。

新制度の注意点

改正により自筆証書遺言は以前に比べて格段に書きやすくなりますが、いくつか注意点がありますので確認していきましょう。
<注意点①>
 自書ではない財産目録の全ページ(両面の場合は両面)に署名・押印が必要となります。登記事項証明書や通帳のコピーにも署名・押印が必要です。押印は、実印以外も認められますが、後々の紛争リスクを回避するためにも実印が無難でしょう。
 また、遺言書本文と他の財産目録との間に「契印」は必要とされておりません。しかし、一体性を確保するため契印しておくほうが望ましいでしょう。
<注意点②>
 財産目録に添付する登記事項証明書等の発行日・作成日は、遺言作成日より前の日付(同日含む)でなくてはいけません。財産目録は遺言書と一体ですので、遺言作成日より後の日付では遺言の一部とは認められません。
<注意点③>
 施行日(2019年1月13日)より前に新方式で書かれた自筆証書遺言には、効力がありません。あくまで施行日以降に書かれた自筆証書遺言が対象です。施行日より前の日付で書かれたものについては、改正前の法律が適用されます。

最後に

 今回の改正によって、それ以前よりも手軽に遺言書を作成できるようになりました。2020年の7月10日には自筆証書遺言の保管制度も開始されますので、自筆証書遺言の利用は今後、確実に増えていくことでしょう。一方、公証人が作成に関与する公正証書遺言に比べると、自筆証書遺言は依然としてその有効性をめぐって争いに発展するリスクが高いといえます。
 よって、今後は自筆証書遺言(保管なし)、自筆証書遺言(保管あり)、公正証書遺言、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自分にあった形式で遺言書を書くことが重要となってきます。また、家族信託と併用する場合は、遺言で承継させる財産と信託契約で承継させる財産の選別も重要です。
 選択肢が多くなった分、事前の情報収集や制度理解が大切となってきています。遺言の作成を検討している方は、まず弁護士・司法書士などの専門家に相談してみましょう。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

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