2020.8.14
/
相続のプロに聞く

【司法書士の目~VOL.23】認知症への備え!お金を安全に管理する4つの対策

(画像=syda-productions/stock.adobe.com)
(画像=syda-productions/stock.adobe.com)

はじめに

 超高齢社会が進行している昨今、認知症高齢者数も年々増加しています。内閣府の調査によると、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症高齢者数はおよそ730万人に上るとされています。これは、実に高齢者(65歳以上の方)の約5人に1人にあたります。認知症の高齢者を抱えるご家族も今後は非常に多くなるでしょう。
 認知症を発症し「判断能力」(物事を決める能力)が低下すると、預貯金や不動産などの財産を凍結される可能性があります。財産の管理や処分などを行うためには、法律上の判断能力が必要であり、判断能力がない状態で行われた行為は法律上無効となるからです。
 例えば、親の生活費や介護費用、医療費などを親の預貯金から引き出す場合、親に判断能力がない状態では、原則として子どもであっても預貯金を引き出すことはできません。
 従来は、このような財産の凍結への備えとして、信頼する子どもに暗証番号を伝え、キャッシュカードを渡しておいたり、事前に引き出して現金で自宅に保管したりと、親の財産を子どもが事実上管理できるような対策が取られていました。
  しかし、これらの対策は子どもに法律に則った管理権限が与えられているものではありません。本人が認知症になった後、銀行に本人確認・意思確認を求められた場合、口座は凍結されます。また、財産を使い込んでいないか他の親族に疑われるケースもあります。
 そこで今回は、「認知症への備え!お金を安全に管理する4つの対策」を解説します。

対策1「金融機関の代理人制度」

金融機関によっては、預貯金などの口座について「代理人制度」を利用できます。代理人制度とは、預金口座の名義人以外の人を代理人として届け出ておくことで、本人でなくとも、その代理人によって預貯金の引き出しなどを可能とする制度です。多くの場合、代理人用のキャッシュカードが新たに発行されます。
 なお、代理人となるには一定の範囲の親族でなくてはならないなど、金融機関によって利用条件は異なります。届け出る前に、普段メインで使用している金融機関に確認すると良いでしょう。また、本人が認知症などで判断能力を喪失した後に金融機関がその事実を知った際が、代理人であっても口座の利用が認められなくなることがあるので注意が必要です。この場合は、基本的に家庭裁判所で成年後見制度を利用しなければなりません。

対策2 「家族信託」

 家族信託とは、不動産や金銭などの財産の管理や処分を、判断能力が十分なうちに家族に託しておく制度です。「信託」という文字をみると、銀行に頼んで行うものだと誤解する人も多いのですが、あくまで「家族」を「信」じて、財産を「託」すことです。こちらは家族が行う財産管理の制度になります。
 財産を託す人を「委託者」、財産を管理する人を「受託者」、利益を受ける人を「受益者」と呼びます。一般的には司法書士や弁護士などの専門家がサポートし、公証役場で信託契約を締結することによって有効になります。
 家族信託を利用することで、本人が認知症になった後も、家族が財産管理を継続できます。家族だけで運用できるためランニングコストが発生しないこと、信託契約に従って柔軟な管理・処分が可能になること、本人が死亡した場合の承継先まで決めておけることなど、多くのメリットがあります。認知症による資産凍結問題が注目されるようなった近年、利用が急増しているといわれています。
 一方で、家族信託は歴史の浅い制度です。判例の蓄積などが少なく、対応できる専門家が十分でない点に注意が必要です。特にお金の管理については、いくら信託し、いくら本人の手元に残すのか、本人のライフプランを組み立てながら丁寧に検討する必要がありますので、経験豊富な専門家に依頼することをおすすめします。また、家族信託を利用する場合には、一般的に家族信託専用の口座(いわゆる「信託口座」)を金融機関で開設することが推奨されていますが、これに対応している金融機関は全国でもまだ限られているのが現状です。
 

>>相続の専門家に相談する

対策3「家庭裁判所が運用する任意後見制度」

 任意後見制度は、本人が元気なうちに、将来判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、後見人を自ら選んでおく制度です。家庭裁判所が運用している成年後見制度の一つで、支援する人を任意後見人、支援される人を被後見人といいます。この制度を利用するには、事前に任意後見受任者(任意後見人となる予定の者)と公正証書により契約を締結しておくことが必要です。任意後見受任者には、家族だけでなく弁護士・司法書士などの専門家を選ぶこともできます。また、任意後見開始時には、任意後見人を監督する任意後見監督人が必ず家庭裁判所によって選任されます。なお、選任される任意後見監督人は弁護士・司法書士などの専門家になります。
 本人が認知症などにより判断能力を喪失した場合、この制度を利用することで、任意後見人が代わりに全財産を管理できます。家庭裁判所が運用している制度に則り、任意後見人は任意後見監督人のもとで支援を行いますので、安全に財産を管理できます。
 一方で、後見制度は原則として本人が死亡するまで続くこと、らず、管理する財産は本人の財産を守るためにしか利用できないという決まりもあります(リスクのある財産運用などは原則として認められません)。また、任意後見監督人となる専門家に対しては報酬を支払う必要があります。利用の際には十分に検討しましょう。

対策4 「信託銀行などによる信託サービス」

 近年、認知症対策として信託銀行などによる信託サービスも増えてきました。これらのサービスは、対策2で確認した「家族信託」と同様に「信託」という制度を用いています。しかし、家族信託は家族が財産管理を行うのに対して、信託サービスは信託銀行などが財産を預かり、運用することになります。また、家族の指示に基づいて(あるいは認知症の発症などを条件に)お金を受け取ることができます。信託銀行などが管理することから信頼性が高く、より安全・安心といえます。任せられる家族がいないなどの場合には検討してみるとよいでしょう。
 一方で信託サービスは、信託銀行などのルールに従う必要がありますので、家族信託に比べると自由度がありません。また、信託報酬などの費用が発生する点にも注意が必要です。

最後に

 今後、認知症高齢者の増加が確実視されているなかで、家族が認知症になった場合の財産の管理方法は非常に悩ましい問題です。何も対策をしていないと、財産が凍結し使えなくなるリスクがあります。今回取りあげたように、お金の管理にはさまざまな方法があります。それぞれのメリット・デメリットを見極め、認知症への備えを進めておきましょう。
 
元木 翼 もときつばさ
司法書士法人ミラシア・行政書士事務所ミラシア  代表 
家族信託・民事信託のミラシア 
https://kazokushintaku-mirasia.com/

千葉商科大学特別講師
一般社団法人OSDよりそいネットワーク 理事
日本弔い委任協会 理事

相続、遺言、後見、家族信託などが専門。相続・終活関連の相談実績は1,000件を超える。豊富な経験・事例を基に、“オーダーメイド”の相続・終活対策サービスを展開している。
 

>>相続の専門家に相談する

ご依頼の不動産を無料で査定
3分で依頼完了!
査定金額と活用アドバイスをメールでご送付。
※しつこい営業電話はいたしません。
 

【オススメ記事】
そろそろウチも‥‥と思ったら。生前の相続対策、何から始めればいい?
相続で迷惑をかけないために 生前整理のすすめ
【司法書士の目~VOL.1】プロが教える!生前対策3つのポイント
【司法書士の目~VOL.2】認知症対策の切り札「家族信託」とは?
【司法書士の目~VOL.3】「家族信託」は誰に頼む?かかる費用は?
【司法書士の目~VOL.4】「家族信託」と「成年後見制度」の違いを知ろう

この記事をシェア

相続MEMOをフォロー

相続のプロに聞く

NEXT 【司法書士の目~VOL.24】家族信託を始める前に要チェック!“相続法”大改正のポイント③
PREV 【司法書士の目~VOL.22】家族信託と同時に遺言の作成を検討すべき3つの理由

関連記事