2019.6.11
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不動産

2020年問題 生産緑地は宅地化するか?土地を所有する人の使い方一つで地域の不動産価値は変わる?

(写真=oticki/Shutterstock.com)
(写真=oticki/Shutterstock.com)

地域によって差がつき始めた住宅不動産の価値

国土交通省が運営する情報サイトに土地総合情報ライブラリーというものがあります。
このサイトでは公示地価や直近の不動産取引事例価格などの情報が手に入ります。
一つの例として「平成29年地価公示の概要」という情報が開示されています。それによると土地の公示価格の動向は全国・全用途平均で2年連続上昇しています。
特に住宅を建てる用途の土地「住宅地」の平均地価は9年ぶりに下落を脱して横ばいに転じたと記されています。
主な資産は住宅用不動産だ、という方にとっては良いことだと思える話です。

ただし細かくみるとその様相は地域によって異なります。三大都市圏の住宅地では前年並みの小幅な上昇が続き、
三大都市圏以外の主要四都市(札幌、仙台、広島、福岡)の住宅地は三大都市圏を上回る上昇を見せている一方で、
その他の地域では下落幅こそ徐々に縮小しているものの下落傾向が継続しています。
 

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住宅不動産の価値は環境変化の差によって起こる。例えば空き家問題

上記のような価格の動きはその地域を取り巻く「環境変化」によって起こります。代表的な変化の一つが空き家・空き地問題です。
空き家や空き地、それはすなわちその場所では使わなくても困らないほどに家や土地が余っているということであり、
一般的にはモノ余りの時にはモノの値段は下がるように、家や土地の値段を引き下げる圧力となります。

5年ごとに行われる「住宅・土地統計調査(総務省)」によると、平成25年調査の確報集計結果にみる国内の総住宅数は6063万戸で平成20年調査にて比べ5.3%増加しています。
この6000万戸のうち「空き家」の比率を示す空き家率は13.5%、戸数にしておよそ820万戸強と過去最高となっています。

820万戸の空き家の半数は賃貸住宅で、地域も都市部以外の割合が高いことが特徴です。
そうした空き家問題の背景には、
例えば地方都市で言えば都市圏への人口流出と世帯数の減少による住宅需要の減少に関係なく相続税対策を目論んだ需要なき賃貸住宅の建設による供給過剰の発生といった、
不均衡な需給バランスがもたらす構造的な問題が挙げられます。
 

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さらに変動をもたらす?都市部特有の問題、生産緑地の2022年問題の可能性

先ほど示したような人口や世帯数による問題は、今は地方都市で起こっていますがこの先は都市部でも起こる環境変化です。
実は都市部ではこれ以外にもさらに空き家、空き地発生を拡大させる可能性を持つ都市部にだけ特徴的な問題があります。
それは生産緑地の2022年問題と言われる問題です。

時代を少しさかのぼりますが、高度経済成長期の人口流入と産業集中によって都市部では急速に市街地化が進みました。
住宅地や産業用地の需要が高まり農地として使われていた土地にも宅地にせよとの圧力が強まりました。
その結果、三大都市圏の特定市では市街化区域内(優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)で保全すべき農地と宅地化される農地に区分されました。
その際、保全すべき農地として指定されたのが「生産緑地」です。
生産緑地の指定を受けた土地は、指定後30年間は農地として使い方が固定されますが、
30年を経過したときに主たる(農業)従事者(所有者)が死亡または従事できなくなった場合に市町村に対して買取の申し出を行うことができ、
特別な事情がない限り市町村は時価で買い取る、と定められています。生産緑地指定が初めて行われたのが1992年、
つまり2022年問題とは、法の改正後初めて生産緑地指定を受けた生産緑地の地主からの指定解除の申し出が集中的に起こることで発生する問題をさしています。
ただし、指定解除の申し出自体は定められた手続きとして特段の問題ではありません。問題という意味は、30年の間に生じた市場環境の変化です。
特に都市部においても高齢化や少子化が進み空き家問題の発生や賃貸住宅の供給過剰といった状況が生まれる可能性があります。
そういった状況下に集中的に大規模に指定解除された土地が宅地化することで、家や土地あまりが一層進み、
地域の資産価値が目減りすることが「問題」だと指摘しているのです。

生産緑地の集中的な指定解除は起こるのか?

「平成27年都市計画現況調査(国土交通省)」によれば調査時点で、全国222自治体に、
62,442地区、合計面積で13,442ヘクタールの生産緑地が存在しています。この状況を平成22年の同調査結果と比べると、
生産緑地が存在する自治体数は7増(平成22年は215)ですが、指定地区数は2,345減(平成22年は64,787地区)、
その合計面積は805.9ヘクタール減(平成22年は14,247.9ヘクタール)となっています。

5年間で5%の生産緑地がなくなっているわけですが、生産緑地の指定解除が申し出されても、
実は財源不足から行政が買い取ることができなかった場合も多いと言われています。
このような変化も指定解除後に宅地化が進む可能性を高めている要素の一つと考えられます。

不動産資産を持つオーナー、地域の共通利益 長期にわたる価値の維持

財政問題による宅地化の拡張懸念については、平成27年4月の生産緑地法改正で30年間の指定後の10年間の延長や、
都市農地を活かしたまちづくりを進めやすくする生産緑地での行為規制の緩和、例えば農家レストランの設置等が盛り込まれ、
指定解除後に即宅地化という流れを止めるような法整備も進んでいます。

資産として住宅や宅地を持つ人にとって地域の不動産価値が維持されることは大きな利益です。
需要のない宅地化の拡大は地域の不動産価値を引き下げる悪循環を起こしかねません。
さらに、都市農地として使われていることで地域にとって精神的にも環境的にも好作用をもたらす緑地空間となっているような場合もあります。
こうしたアメニティ価値として地価形成の一要素として地域の不動産価値に寄与していることも考えられます。

この先、土地を所有する人の使い方一つで「長期的に見て」地域の不動産価値が変わってしまうことを自覚しておくべきでしょう。
 

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